足の治りにくいキズをどう扱うか?
<2020年6月10日公開、2020年9月3日 リライト>
足の傷は他の部位よりも治りにくいです。その原因は様々で、難治化している原因に対してうまくアプローチすれば1−2ヶ月治らなかった傷もあっさり治ったりします。またその逆もあり、原因の改善がうまくいかなければ、外来で処置を繰り返しても、いつまでたっても治癒が得られないということもあります。治りにくい足の傷に対する考え方をまとめてみました。
難治性潰瘍とは?
難治性潰瘍とは、その言葉どおり「治りにくい傷」のことです。定義はあいまいですが、「通常の治療・処置を行い、1ヶ月以上治癒が得られない状態」のことを難治性と呼ぶことが多いです。ここで論じる「難治性潰瘍」とは数ヶ月〜数年という期間で治っていないような傷のことを指すと思ってください。
難治性潰瘍の代表といえば「褥瘡」です。他には「糖尿病性足潰瘍」や「鬱滞性皮膚潰瘍」、特別な疾患による皮膚潰瘍(天疱瘡やウェルナー症候群)などが挙げられます。
足の傷が治りにくい要因は?
足の難治性潰瘍で、我々が一番嫌な要因は「虚血性」です。足の動脈が動脈硬化などで血流が乏しくなり、末梢まで血液が届かず、皮膚が維持できない状況となり壊死してしまう状態です。虚血早期であれば血行再建するなどで下肢救済できることもありますが、切断術の適応となることもあります。
数ヶ月〜数年治らない傷の場合、「虚血性」よりも「静脈鬱滞性」を疑います。先ほどの虚血性は動脈の閉塞・狭窄であるのに対して、静脈鬱滞性は血液がうまく心臓に戻れず、下肢で鬱滞してむくみ、傷から汁がにじみ出てくるような状態になり、じわじわと下腿の潰瘍が広がってきます。
近医で通院処置を繰り返し行っているが、治るどころか徐々に広がってくるような状態のとき、鬱滞性皮膚潰瘍が疑われます。
実際にこれまで5年近く潰瘍が治らず通院を続けていた人や、最長では20年もの間潰瘍が治っていなかったという患者さんも来院されたことがあります。適切な対応をすると、時間はかかりますが、基本的には皆さん治癒していきます。病態に応じた細やかなケアが必要です。
治りにくい足の傷を治すには?
いろんなアプローチがあると思いますが、難治性潰瘍をたくさん取り扱う形成外科の立場から1つポイントを挙げるとすれば、「入院・安静」が非常に重要であると考えています。
なんとか自宅での処置や外来通院で治したいところでしょうが、1ヶ月以上経過しても改善しない傷の場合は、「歩行・移動」や「安静がとれていないことによる下肢浮腫」が増悪因子になっている可能性が考えられます。
当然入院だけで治るはずはありません。潰瘍の原因に対する治療、潰瘍に対する直接的な手術療法など様々な治療を複合させなければ治癒が得られないことも多いです。しかし、なかなか入院させず(もしくは患者さんが希望されず)外来で長らく観察している難治性潰瘍の症例が多くみられるのも現状です。
入院による下肢安静とベッド上での患肢挙上、移動は制限しませんが患肢挙上できる車椅子などを利用した生活を徹底すると、下肢の浮腫がとれて、治癒に向かいます。
生駒市立病院では難治性潰瘍を集中的に治療して、完治を目指しています。時間がかかる患者さんも多いですが、様々なアプローチで諦めずに治療をしていれば、自ずと治療への道が開けることが多いです。難治性潰瘍でお悩みの方は、ぜひご相談ください。