グラッシュビスタの衝撃

グラッシュビスタの衝撃

グラッシュビスタは「睫毛貧毛症」の治療薬です。そんな病気あるのかというご指摘はさておき(抗がん剤治療中の方に向けた病名になります)、「上まつ毛の長さ、豊かさ(太さ)、濃さを改善する外用薬」ということです。毎日、上まぶたに塗布することで、3〜4ヶ月かけて睫毛が伸びていきます。アラガン・ジャパン株式会社から発売されている薬剤ですが、保険適応はなく、自費治療薬になります。

外来で使用中の患者さんを見ていると、かなり有効に作用していて、皆さん目元がエクステをつけたようにしっかりとしてきます。成分や使用方法について解説します。

配合成分と成分効果の詳細

成分:ビマトプロスト (Prostaglandin F2α誘導体)
毛周期における成長期を延長して、まつ毛の長さを伸ばします。
休眠状態にある毛包を刺激し、まつ毛の厚みや太さを増加させます。
メラニン合成を活性化させ、まつ毛の色素沈着を強くし、睫毛全体的に暗色になるように作用します。

その他添加物:ベンザルコニウム塩化物、塩化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム・七水和物、クエン酸水和物、塩酸、 水酸化ナトリウム

日本人での臨床試験では、特発性睫毛貧毛症及びがん化学療法による睫毛貧毛症の成人患者にこの薬を4ヵ月間使用した結果、評価スケールで1段階以上の改善が役80%の割合で認められたという報告があります。

内容量・価格・使用方法

含有量:1mL中 0.3mg 総量5.0mL 70日分〈専用ブラシ140本添付〉  

使用方法:片目ごとに、1日に1回1滴を専用のブラシに滴下し、上まつ毛の生え際に就寝前に塗布。1日1回を超えて塗布しないでください。

薬液が、上まつ毛の生え際以外についた場合は、すぐにふき取るか、洗い流してください。

①ご使用前

メイク落としと洗顔を済ませて清潔な状態にしてから使用。コンタクトは必ず外して、塗布後15分以上経過してから装着するようにしてください。下まぶたは塗布しないでください。

② ブラシの準備

ブラシを取り出し、先端にグラッシュビスタを1滴落として染み込ませます。

③まつ毛の生え際に塗布

ブラシで上睫毛の生え際に薬液を塗布します。目頭から目尻にかけて塗っていきます。下睫毛には塗布しないでください。1日1回のみ使用

④ 生え際以外についた液をふき取る

睫毛の生え際以外についてしまった場合はティッシュなどで丁寧に拭き取ってください。

グラッシュビスタ®の副作用「眼瞼色素沈着」

グラッシュビスタの効能によりメラニン色素が増加し、睫毛の周りの皮膚が少し色素沈着を生じることがあります。少し効果がありすぎて多毛ぎみになることもあります。これらの効能(副作用)についてはグラッシュビスタの使用を中止するとゆっくりと元に戻っていきます。

薬剤の皮膚炎によりまぶたや目元のかゆみ、痛みが現れることがあります。もし症状が続く場合は処方元に受診しましょう。

感想

グラッシュビスタは2014年3月に厚生労働省によって製造販売が承認されています。

グラッシュビスタ®は、米国ではFDAの承認により2009年から睫毛貧毛症治療(まつ毛貧毛症治療)に使われており、2013年10月の時点で世界23ヵ国で承認され、多くの方々に使用されている医療用医薬品です。

もともとこの「グラッシュビスタ」は「ルミガン」という緑内障治療薬として開発されました。緑内障の患者さんが睫毛が伸びて濃くなることから、睫毛貧毛症に適応がとれ、自費販売されるようになったという経緯があります。

厚生労働省による承認薬ということで安心感がありますね。

効能は非常に顕著です。2−3ヶ月の使用でみるみる睫毛が濃く、長くなってきます。当院であつかう化粧品はほぼ全て自分で使って体験していますが、グラッシュビスタだけは男性である私は使えません。アンチエイジング外来の開設早期から通っていただいている患者さんに愛用者が数名おり、その方々の経過を見させていただいている限り、効能は「非常に強力」です。

患者さんの声としては「眼瞼色素沈着が心配でしたが、案外アイシャドウが入らなくて目元がはっきりするのでそれほど気にならない。むしろ良かった」などというご意見もいただいております。

最初の2−3ヶ月は連日使用で、その後維持期には隔日塗布を勧めています。1キットでかなり維持できます。1本で左右の目元を塗布すれば1セットで140日(4ヶ月)も持ちます。月5000円の計算です。その後隔日使用であれば年間2セットで対応できてしまいます。月3500円計算です。

エクステを使用するよりも目元に重さの負荷がかかりません。当然エクステは異物なので目元にバーベルをつけているようなもので、眼瞼下垂を誘引します。グラッシュビスタで伸びた睫毛は自分の毛なので、目に優しく眼瞼下垂の予防にもなります。

ご興味あるかたは、ぜひ外来でご相談ください。