眼瞼下垂、いつ手術するべきか

眼瞼下垂、いつ手術するべきか

<2020/9/1 リライト>

眼瞼下垂の診療には、5年前奈良に赴任してからまぶた専門外来を立ち上げ、注力してきました。おかげさまで、患者さんもたくさん来院していただいています。相談に来られる患者様は、大半は手術を決めてから来院されます。中には説明を聞いて、抱いていたイメージと異なるため、もう少し待機を選ぶ方もいらっしゃいます。特に悩まれる「今すべきなのか、もう少し後の方がよいのか」という点について、診療にあたる形成外科医の視点から説明します。

来院される方が主に手術を決めた理由

もっとも多い理由は、当然ですが「視野が狭くなり日常生活に支障を来す」というものです。しかし、その「日常生活の支障」の具体的な事案については個人によって様々です。実際にあった訴えとしては

「テレビが見にくい」「本が読みにくい」

「写真でいつも目を閉じているように写っていて嫌だ」

中でも割合が高い訴えが、

「眼科の診察時に、目を開けているのに『目を開けてくださいねー』と言われて上まぶたを引き上げて抑えられるのが苦痛」

そして、意外に多くてちょっと怖い訴えが

「車を運転しているときに、信号を見落とす」

高齢者の方の交通事故が話題になることがありますが、眼瞼下垂も一つの要因になっているのではないかと思ってしまいます。免許センターでは視力しかチェックされませんが、眼瞼下垂についても運転免許の発行時に評価して欲しいものです。

手術の適応があっても最終的に手術するかどうかを決めるのは患者さん本人です。

手術を受けることで得られるもの

当院では主に「挙筋前転術」と「眉下皮膚切除術」を、患者さんの状態にあわせて実施しています。

「挙筋前転術」を受けられた場合、余った皮膚の切除と弱った眼瞼挙筋の付け直しを行うので、目元のたるみはすっきりして、今までよりも楽に目が開くようになります。

「眉下皮膚切除術」は、目元の外上側の余剰皮膚が多い方や、目を開ける筋肉はあまり弱っていないが、皮膚のたるみにより視野が妨げられている方に適応があり、これまで皮膚によって「庇(ひさし)」のように覆われていた部分が開けて、見える範囲が広くなります。

いつ手術するべきなのか

まずは手術適応があることが前提ですが、それについては医師が判断します。たとえ手術適応があっても、いざ手術する時期を決めるのは患者さん本人です。

当然、眼瞼下垂の手術は「急ぐ」必要はありません。放っておいても命には影響しません。

よく外来で私が患者さんに言うのは「病院に相談に来るほど、眼瞼下垂で嫌な思いをされているのであれば、手術を受けられる時期だと思いますよ」ということです。

眼瞼下垂は、「これ以上ひどくなったら手術」という線引きが不明瞭な疾患です。だから、不具合を感じるようになった時が手術を受ける時期というのも一つの考え方だと思います。

個人的な意見ですが、「信号が見えない」と言ってくる患者さんには「ぜひ手術してください」とお願いしています。

参考までに手術点数の費用を以下に記載しておきます。入院で行うと入院費用も加算されるので「片目の手術だけの費用」と考えてください。保険3割負担の方なら2泊3日挙筋前転両側対応で7万円〜7万5千円程度の自己負担額になります。

眼瞼下垂症手術

K219 眼瞼下垂症手術 

  1. 眼瞼挙筋前転法 7,200点(3割負担:21600円、左右で43200円)
  2. 筋膜移植法 18,530点(3割負担:55590円)
  3. その他のもの 6,070点(3割負担:18210円、左右で36420円)

術後経過を詳細に

こちらの記事をご参考ください。