「ほくろの治療」は皮膚科より形成外科が良いと思う訳

「ほくろの治療」は皮膚科より形成外科が良いと思う訳

結論:ホクロなど小腫瘍の相談は皮膚科よりも形成外科のほうが「治療の幅が広がる」ためオススメ。

自分が形成外科だから贔屓目もありますが、ホクロに代表される「表在性の皮膚腫瘍」や、粉瘤・脂肪腫などの「皮下腫瘍」については、形成外科受診をおすすめしたいところです。

一般の方からすると、「皮膚の問題だから皮膚科に受診する」のが素直な反応だと思います。形成外科がもっと認知されて、皮膚の外科的対応(切ったり削ったり)は、だれしも形成外科を受診するのが常識というくらいになればいいのですが・・。

こういったブログで一般の方にもわかるように形成外科について紹介することも、一つの活動だと思います。

世間の認識として「ホクロはレーザーじゃないの?」という考えが浸透してしまっているので、間違いではないのですが「レーザー1択」ではあまり良くないですので、詳しく解説していきます。

CO2レーザーの1択では小さい病変しか対応出来ない

Image by Anastasia Gepp from Pixabay

CO2レーザーは波長10,600nmの赤外線領域の光を発する、水に反応する特長のあるレーザーです。

皮膚には水分が多く含まれており、Co2レーザーを照射すると、その部位の細胞内の水分が反応して熱エネルギーが発生します。生じた熱で水分が瞬間的に蒸散することで皮膚が削られ、ホクロが除去されます。

1mm、2mm程度の小さいホクロであればCO2レーザーでホクロだけを焼灼することで、深部の真皮のダメージを最低限で切除できるので非常にきれいに治療することができます。小さいホクロについてはCO2レーザーで対応するのが最良だと思います。

一方で、7-8mmを超えてくるような大きくなったホクロについては深部にも大きくホクロの本体が存在しているため、CO2レーザーで無理に全切除しようとすると大きく真皮に欠損を残すことになります。そのまま自然に縮小して上皮化するのを待ちますが、真皮に傷が残るので瘢痕が非常に目立つことになります。

ある程度の大きさを超えてきたホクロについては、メスで真皮ごと切除して吸収糸で埋没縫合でしっかりと合わせて縫合します。

術後に真皮に引っ張られるチカラがかかると、徐々に瘢痕の間が広がり少しミミズ腫れ様に膨らんでしまうので、それを計算して埋没縫合で真皮同士を少し膨らむくらいにきっちり寄せて縫合、表面は極めて細い糸で結び目の型がつかないように緩めに縫合します。

埋没縫合と表層縫合は「形成外科が他科に負けられない」手技であり、それぞれの先生がこだわりを持っている技術です。自分も形成外科を15年やっていますが、埋没&表層はかなりコダワリをもって対応しています。単に細かく縫うのではなく、絶妙な合わせ方、締め方、針の角度など、細かい職人技とも言える技術だと思います。たくさんの手術を経験している形成外科であればこそ、埋没&表層には思い入れが強いと思います。

CO2レーザー1択ではなく、手術による切除も選択肢にいれて治療方法を検討・提案できるのは形成外科の特権です。

小さい病変でも場所によってはレーザーよりメスのほうがいい場合もある

Photo by Angélica Echeverry on Unsplash

最近では、先に言った1mm−2mm程度のホクロでも11番メスでホクロのところだけを核出して、表面を寄せるように表層縫合して切除するほうが、CO2レーザーよりもキレイに治る場合もあるため、CO2レーザーを使う機械が非常に減りました。

脂漏性角化症という「角質の肥厚が主体の病変」であれば面状にCO2レーザーで削る治療のほうがきれいなので「スキャナ付きCO2レーザー」で表層だけキレイに削り取る治療を行います。

目元に近い部位についてもメスのほうが良い場合があります。目にCO2レーザーが誤って入ると危険ですので、目のキワのホクロなどはメスで慎重に切除して、縫合でキレイに合わせます。

皮膚のシワがくっきり出る場所や、体の構造物の谷間になる部位では直線の縫合線がシワ・谷間に紛れるので、レーザーより縫合のほうがきれいに目立たない場合も多いです。高齢者の顔の皺に一致する傷は非常にキレイに紛れて、ほとんどわからなくなります。

小鼻の際のホクロなども、CO2レーザーでクレーターにするより、構造の谷間に合わせるように切除したほうが、かなりキレイになります。

一般の方にはわかりにくいかもしれませんが、形成外科医師なら常識的なことですので、CO2レーザーで削ったほうがきれいなのか、手術で切ったほうがきれいなのか、最良の方法を選んで貰えると思います。

手術は「慣れ」と「経験」で差が出る

Photo by Austrian National Library on Unsplash

手術の上手い、下手はやはり「慣れ」と「経験数」によると思います。受診する先生のプロフィールなどで、勤務遍歴を確認しましょう。市中病院に長く在籍した経験のある先生は、年がら年中そういった小さい腫瘤の摘出を日常的にこなすため、埋没&表層縫合の基本手技がどんどん高品質になります。

たとえば当院では月に60件近くの小手術があります。バイト先も含めると月に100件近くの皮膚縫合を伴う手術に対応していることになります。年間で1000例を超える数になり、ここ数年はそういう状況がずっと続いています。形成外科医になってから15年、何例の手術を行ったかわかりませんが、1年間だけ大学に所属していた以外はずっと市中病院で勤務していましたので、おそらく同年代の先生よりは数多くの経験を得たと思います。

市中病院で長く部長をされている先生はたくさんいます。クリニックで地域にしっかり根ざした医療をされている形成外科の先生方もおられます。特に「形成外科クリニック」で日帰り手術を長く対応されている先生は技術的に安心できるはずです。

ホクロを取りたいと思ったら、ぜひお近くの形成外科に受診しましょう。

Image by Anastasia Gepp from Pixabay