足の診療は形成外科の強力な武器になる

足の診療は形成外科の強力な武器になる

結論:足にまつわる様々なトラブルに対する診療は、皮膚科や整形外科が距離を置きたい病態が複雑に絡むので、形成外科が治療の主導権をとれる貴重なジャンルです。

総合病院では入院診療につなげて、診療科の存在感・必要性を高めていくことができます。

クリニックでは爪や胼胝、足底の皮膚腫瘍や下肢静脈瘤治療、難治性潰瘍に対する外科的治療と保存的治療の融合が実現できます。

形成外科は大学では「再建外科」「先天異常」の治療という他科が触らない領域を確保しやすいですが、一般病院やクリニックなどでは、なかなか症例数・業務内容が増えず、下手をすると「暇な診療科」になりかねません。他科のトラブルに対応したり、体表外科として救急後の処置対応などを重ねながら、「足の診療」を上手く自科の領分にしていけば、どんどん症例数が増えて忙しくなっていくと思います。

大前提として、そういった状況を望むかどうかはさておき・・形成外科にとって「足の診療」を追求していくことは強力な武器になると思います。

皮膚科は距離を置きたい「外科治療」の領域

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足のトラブルで多いのが「水虫」や「陥入爪」です。一般の患者さんの多くは皮膚科を訪れます。過去には皮膚科も外科的治療をされる先生が多かったのですが、近年は各大学に形成外科がしっかり講座として根付き、皮膚外科については形成外科が触る状況が多くなりました。結果としてお若い先生方の中には外科的手技はされない皮膚科の先生が増えています。

たとえば陥入爪、どうしても皮膚科の先生方の発想では「手術なしでなんとか良くしたい」という思いがあるのか、ワイヤーやプレート、綿球挿入、テーピングなど、いろんな保存的治療、半分外科的な治療がなされます。改善する場合もあるのでしょうが、1年近く改善せず、その次の「外科治療」に行けず消毒をチョンチョンされながら通院しつづけている症例を良く見ます。

陥入爪の治療は、或る一定の食い込みがある状況なら外科治療(爪母切除)が劇的に効きます。再発性も非常に低いです。手術を普段しない先生方には理解できないかもしれませんが、後遺症もほとんどありません。爪が食い込みながら1年通院させられるほうがよっぽど後遺症でると思います。

他にも、日光角化症やボーエン病などの上皮内癌についても、すかっと手術治療をすればいいのに液体窒素や5FU軟膏などをやりがちです。

最近あったのは「下腿の褥瘡」、他院皮膚科でデブリ、植皮をしたようですが(非常に有名な先生・・・)完全にデブリ不良のまま植皮を植えたようで、植皮は脱落・・・そこからリカバーの手術を考えず「植皮ではなおらない」とされ壊死組織が残ったまま3ヶ月も保存的治療・・。手術するからには結果にも責任を持ち、「失敗した場合もどうリカバーさせていくのか」を外科的思考と保存的思考を融合して対応すべきです。

保存的治療が良い場合もあるかもしれませんが、外科的治療というカードが出せる人が保存的治療をする場合と、外科的治療の発想がないまま保存的治療を長くされている場合は意味合いが違います。当然、皮膚科が強い場合もあります。形成外科は皮膚内科疾患は経験が浅いため苦手としています。だからこそ、皮膚科と形成外科は表裏一体で、互いに良い協力関係であるべきだと考えています。

整形外科は距離を置きたい「難治性潰瘍治療」の領域

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足のトラブルで悩ましいのがうっ滞性潰瘍に代表される「難治性潰瘍」です。ベースにうっ滞性皮膚炎などが存在した下肢に外傷後が加わることで生じることも多く、整形外科の先生が初療されている場合もよく見ます。

外傷後の骨折などは整形外科の領分になりますが、虚血やうっ血が重度である場合、創の治癒が遷延し、最悪の場合は「徐々に拡大していく」ことになります。積極的に下肢の虚血やうっ血の評価に力を入れている整形外科の先生は・・正直あまり見たことはありません。整形外科の先生方は症例が非常に多く、手術も入院患者もたくさん抱えられているため、難治性潰瘍の病態については「形成外科に譲りたい」と言ってくれる場合が大抵です。

形成外科では、下肢の虚血やうっ血の病態の評価をしっかり行い、それぞれの病態に合わせた外科治療を考慮します。虚血については循環器科でカテーテルを依頼します。形成外科でバイパスまでしている「希少な」先生もおられます。

うっ血については「下肢静脈瘤の治療」が適応になるなら形成外科で対応できます。圧迫療法なども駆使しながら、局所陰圧閉鎖療法で創の環境を整え、植皮や皮弁などにより完全閉鎖を目指します。

難治性潰瘍の治療は、形成外科の先生の中にも「嫌がる」先生はおられます。処置が重労働であったり、患者さんが重症で全身管理が必要になったり、外科治療(植皮や皮弁)の生着率が低かったりするからです。ただそういった「難しい症例」を形成外科で上手くコントロールできるようになれれば、形成外科は病院内でも重要な存在になっていくと思います。

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