眼瞼下垂の術後経過を詳細に。
<2020年6月23日 初回投稿:2020年9月15日 リライト>
眼瞼下垂手術(挙筋前転術)を受けるときに、気になる術後の腫れ。実際に手術後の腫れがどのように経過していくのかを、なるべく一般の方がイメージしやすいように詳細に解説していきます。写真は個人情報の観点からも掲載はできませんので、術者の経験からイラストで表現してみました。腫れの引き方や程度には個人差がありますので、あくまで参考としてみてください。
前提として、一般的な眼瞼下垂症手術である「挙筋前転術(両側)」を受けられた場合の術後経過と思って見てください。
手術当日(腫れ指数:70%)
手術は局所麻酔で行われます。手術予定時間としては片目1時間、両目で2時間ほど時間を取りますが、手術室に入室してから退室までの時間ですので、実際の手術を行なっている時間はもっと短く、両目で1時間少しくらいです。
手術中から目元は少しずつ腫れてきます。二重のラインを切るので、まつ毛と切開線の間が特に腫れぼったい感じになってきます。まだ皮膚に細かい皮膚紋理(細かい皮膚の溝)は見えていることが多いです。術中出血が多かったり、手術に手間取ったりすると、腫れが強くなります。
手術当日は当院ではクッション性のある創傷被覆材を圧迫&創保護のため貼付してテープで固定しています。目は開けれますが、上が抑えられていますので非常に少ししか開きません。
腫れを少しでも抑えるために圧迫に加えて、アイスノンで冷やします。当院では「メオアイス」という製品を入院前に購入してもらい、入院中は断続的に冷却して少しでも腫れのピークを抑えるように対応します。
術後翌日(腫れ指数:100%)
術翌日の朝に被覆材を交換します。この時が一連の経過の中でも最も腫れが強くなります。皮膚紋理は消えて、二重が腫れて分厚く見え、上眼瞼全体的に「パツパツ」な状態になります。痛みについては個人差があり、全く痛みがない方や、多少夜間に痛かったと言われる方など様々です。ひどい痛みで苦しむ方はほとんどいません。
トイレ歩行や病棟を歩いたり、売店に行ったりは可能ですが、基本的には安静に過ごしてもらいます。適宜、メオアイスで冷やしてもらい腫れのピークが過ぎるのを待ちます。
術後2日目(腫れ指数:85%)
朝の処置で観察すると、腫れの程度は術後1日目とさほど変わらないように見えますが、よく見ると皮膚紋理が出始めます。腫れのピークが過ぎた状態です。相変わらず「パツパツ」な感じで、腫れた二重になりますが出血などのリスクも減るので退院が可能です。
被覆材による圧迫も終了し、目元に塗布する軟膏と点眼剤を処方して退院します。
退院後は自宅でシャワー浴可能です。長時間の入浴は血流が良くなり目元が腫れるので控えてもらいます。洗顔はやさしく、なるべく目元はこすらないようにしてもらいます。
伊達眼鏡でもいいので、メガネをかけるとフレームで目元の腫れの印象が紛れます。
術後7日目(腫れ指数:50%)
術後1週間で抜糸をします。外来に来ていただき、5分程度で抜糸します。非常に細かく縫合していますので、「マイクロセット」という顕微鏡手術で使用するピンセットとハサミで抜糸しています。これを使うことで抜糸の痛みが非常に軽減されます。ただし「全くの無痛」ではないので、少し引っ張られるチクチクした痛みはあるものと思ってください。
腫れは退院時に比べてかなりマシになります。まだ「ぽってり」した二重の印象になるため、他人がみても違和感を感じます。挙筋前転がうまく行っていると、腫れている割に目を開けるのが楽になったと本人は実感されます。
内出血で紫色っぽい色が出ていたところも黄色く変色してきます。
術後1ヶ月半(腫れ指数:30%)
抜糸の後は1ヶ月半で来院してもらいます。写真で術前と比較して「眼の開き具合」を確認します。腫れはかなり引いており、楽になります。まだ腫れは残存している状態です。
本人や身近な人は以前の目元の印象を覚えているので、まだ腫れが強く違和感を感じますが、まったく初対面の方なら「こういう目元かな?」と思うくらいに改善してきます。日常生活jは特に支障はなく、運動も可能になります。コンタクトレンズをしている方はこのくらいの時期から、再開可能としています。
術後3ヶ月(腫れ指数:15%)
腫れはさらに引いて、本人も違和感が無くなってきます。術前と比較してみるとまだ僅かに腫れは残存しているのですが、非常に自然になっているのがわかります。この時点でも写真記録ます。
術後半年(腫れ指数:0%)
最終診察になります。半年経過すると、腫れはほぼ無くなります。これ以上経過をみてもあまり変わりませんので、写真記録して一旦終了になります。大半の方は開き具合もよく、腫れも引いており、満足されて終了になります。目元の皮膚性弛緩が強い人は「眼の開き」は広くなったのですが、眉下の皮膚のたるみが残存して、まだ重い印象が残る時があります。その場合はこの時期から「眉下皮膚切除」での追加手術について相談していきます。
おおよそ、術後はこのような経過になります。あくまで一般論ですので、個人差はあると思ってください。