局所麻酔で行う皮膚腫瘍の手術の具体的な流れ

<2020年6月19日 初回投稿:2020年9月14日 リライト>

局所麻酔で行う皮膚腫瘍の手術の具体的な流れ

形成外科に受診される患者さんの半数近くは「皮膚のできもの、皮下のしこり」など皮膚腫瘍・皮下腫瘍に分類される疾患に対する治療を受けられます。形成外科はあくまで「外科」に分類される診療科であり、「外科的手技」にて、なるべく痛くないように、目立たないように、繊細な治療を提供しています。

皮膚のできものを切除して縫うだけなら外科や皮膚科でも対応できる・・そう思う方や先生方もおられると思います。でも自分が形成外科医なので、そこは是非形成外科に受診していただきたいと強く主張したいところです。

単に傷がトラブルなく治癒するだけでなく、なるべく綺麗に、傷跡が目立ちにくく、繊細に皮膚を扱います。形成外科医は綺麗に治すことにプライドを持っている方がほとんどです。「皮膚のできものを綺麗に取りたい」と思った方は、是非近隣の形成外科を受診するようにしてください。

局所麻酔で皮膚のできものを取ることになった患者さんの具体的な流れについて説明します。

手術が決定、手術室入室から消毒

外来で手術の日程が決まれば、その日のうちに同意書術前の採血が行われます。手術日に来院されたら、手術室に向かい、術衣に着替え、看護師の術前問診が行われます。当日の体調チェックや、手術の部位の確認、血圧のチェックなどが行われます。

それらが終われば、いよいよ手術室に入室します。日帰り手術の患者さんは普通に歩いて入室になります。ベッドに横になり、モニターと呼ばれる心電図計、血圧計を装着します。

そして医師がその日の手術部位について最終確認を行います。患部が見えるように術衣をまくり、消毒を行います。

手術の内容や部位にもよりますが、手術部位を中心に15cm-20cm程度消毒を2-3回行います。滅菌された穴開きシーツを術野にかけて準備完了です。

局所麻酔から執刀開始

手術開始の前に、再度医師と看護師で患者さんのお名前の確認、手術部位の確認や持病の確認、内服されている薬剤の確認などを行います。決して間違えて対応しないための確認です。

これらが完了してから、いよいよ手術開始です。手術予定部にペンなどで皮膚切開のデザインをマーキングします。そのマーキングの周囲に局所麻酔を注射します。この注射は一連の手術の流れで唯一痛みを伴う手技ですので、患者さんに声かけをしながら、慎重に行います。

当院では少しでも穿刺の痛みが和らぐように30Gの細さの針を使って局所麻酔を行っています。

針が細いほうが疼痛は少なく済みます。薬液が入り込む痛みはどうしても避けられませんが、すこしでも痛みが少なく済むようにゆっくり、適切な層に注入していきます。

麻酔が終われば、あとは患者さんにとっては寝て待つだけとなります。緊張されて寝れない方もいますが、いびきをかいて寝られる方もおられます。こちらとしては動かなければ寝てもらっていても全くかまいません。そのほうが痛みがない証拠ですし。

執刀は、先にペンで描いたデザインに沿って皮膚を切開します。当然出血はでますが、電気凝固で止血しながら手術を進めていきます。

患者さんは創部に麻酔がよく聞いていれば、触っている感覚や引っ張られるような感覚はありますが、痛みは全くない状態となります。何か気になることがあればお話もできます。当院ではリラックスしていただくために有線で音楽を流して、すこしでも緊張緩和できるように対応しています。

縫合による閉鎖から術後の説明

手術が進行し、目標の腫瘍が摘出されたら、縫合で傷を閉鎖します。当然止血をしっかり確認して、血が出ていない状態で縫っていきます。形成外科では皮下組織を吸収性の糸で「埋没縫合」を行い、しっかり寄せてから、表層はナイロン系の糸でぴったり段差なく「適合縫合」を行う場合がほとんどです。

縫合については形成外科医はそれぞれ先生ごとに細かいこだわりがあります。「傷をきれいに治す形成外科」と思われていることが多いため、患者さんの期待にこたえられるように、どんな小さな手術でも縫合に手を抜くことはありません。寸分のずれもないように埋没縫合で寄せて、表層縫合で合わせる。単純なことですが、何年やっても「難しい」と感じます。

患部の部位に合わせて、糸の使い分けや埋没縫合の寄せ具合の調整を行っています。実は摘出よりも縫合のほうに神経をつかっているかもしれません。

縫合後は「ゲンタシン」などの軟膏を塗布してガーゼ、テープでばんそうこうの様に保護して手術終了です。

処置については、当院の場合は患者さん自己にて行えるように「翌日からの処置方法」について記載した説明書きを準備しています。看護師から処置の仕方について、内服や軟膏の使い方について説明を聞いていただき、帰宅となります。

抜糸は1週間くらいで行うことが大半です。関節にまたがる部分やよく動く部分については2週間くらいで行います。外来で麻酔はせずに糸だけ切って抜きます。よく「抜糸は痛いですか?麻酔はしないのですか?」と聞かれますが、抜糸はほとんど痛くないので、心配しないでいいと思います。少し引っ張られる感覚がありますが、子供さんでも泣かずに抜糸できることが多いです。

抜糸後は傷跡にテープを貼って固定してもらうことがあります。これは傷に直接かかる力を分散して、傷跡の広がりを抑えるためです。2-3日ごとの貼り換えで、貼ったまま入浴も可能で、1か月程度継続していただきます。部位によってはテーピングしない場合もあります。

「できもの」が邪魔になったり、コンプレックスになったり、何か症状を伴って鬱陶しいような場合は、「形成外科」を受診しましょう。