形成外科としての2021年を振り返る(美容診療編)+来年に向けてのお知らせ

形成外科の2021年を振り返る(美容診療編)

2021年も残すところあと1日となりました。12月12日から怒涛の20日連続投稿も達成。2020年8−9月に47日連続投稿がありましたが、それ以来の記録です。FPの勉強が終わり、簿記の勉強も終わり、朝活の時間が空いたことによるブログ記事連投だったのですが、もしかすると鬱陶しくてブロックされた方も居たかもしれません。

さて2021年最後の話題は、美容診療について振り返ってみようと思います。

当院で実践してきたのは「総合病院における美容診療」であり、いわゆる都会の高額な美容診療ではありません。

地域の皆様が「現実的な価格帯」で、「敷居は低く、満足度は高く」、「安心して継続できる美容診療」、そんな美容診療を心がけて2016年から試行錯誤を行ってきました。

普通、美容診療に参入する先生のほとんどは「大手美容クリニック」や「個人美容皮膚科医院」などで修行をされます。そこで得たノウハウをもとに、自分のクリニックを立ち上げていくことが多いと思います。

当院は「保険診療をメインとした総合病院」であり、形成外科はガッツリ保険診療をしながら、美容診療をほぼ独自路線で展開してきました。立ち上げた当初は保険診療とのギャップにかなり悩みましたが、さすがに2016年末からスタートし、5年も経過すると独自路線のなかにも、一つの「道筋」が見えてきたように思います。

総合病院で美容を掲げている当院の初診予約は「美容診療は初めて」の方が8割以上です。初回カウンセリングは必ず「医師」が担当しています。30分を目安に、お悩みの症状に合わせた治療を提案します。治療の選択肢が多すぎると説明も複雑になってしまうので、シンプルな構成に落ち着いていきました。

総合病院の美容診療で、ニーズをうまく捉えるにはリーズナブルで、かつ、確実に効果が感じられる美容診療が必要でした。そこで当院では4つの美容治療の柱、「ゼオスキンヘルス」「M22フォトフェイシャル」「超音波イオン導入(Wビタミン)」「レーザー治療」を基本ニューとし、それらの組み合わせを提案することで、美容が初めての患者さんでも、どの年代にも対応しやすい体制を構築していきました。

開設当初はNsにはエンビロンのWビタミン(超音波イオン導入)のみを担当してもらっていましたが、少しずつホームケアの知識も指導教育し、Nsでのホームケアカウンセリングも途中からスタート、2021年からはIPLのNs施術についても開始しました。Nsカウンセリングから施術、繰り返しリピートまで出来るようになり、当院の美容診療は2021年に非常に発展しました。

当院の美容診療の4本柱を一つずつ考察していきます。

「他と違う」ゼオスキンヘルスのホームケア療法

他との違い:マイルドセラピューティックの推奨

セラピューティックのメーカー推奨の使用方法は「トレチノイン:ハイドロキノン=1:1」、使用トレチノインは輸入対応0.1%、反応期は「乗り越えるもの」であり、2−3ヶ月の使用で赤みがでる期間が治まり、改善肌が得られるというものでした。

当院では「トレチノイン:ハイドロキノン=1:0.5」、使用トレチノインは院内製剤で対応するCDトレチノイン(A反応が抑えられる)、使用方法は「2−3日で赤み、皮むけの反応がでたら、それが治まるまでトレチノイン休止」という、非常にマイルドな仕様をスタンダードで紹介しています。これは当院の患者層にあわせた工夫で、この方針にしてからゼオスキンによるトラブルが激減しました。

他院からのトラブル症例も喜んで受け付けているのも「他との違い」だと思います。総合病院に併設の美容に課せられた使命と思い、他院でがっつり色素沈着になった症例も数例経験しました。みなさん時間はかかりますが、改善して満足されています。

重度ニキビ治療にもゼオスキンを組み込むと非常に効果があるということも、今年1年で学んだことです。数名の「他院で保険によるニキビ治療を長期に行っていたが改善しない」という症例の治療にあたり、劇的な改善が得られました。通常のセラピューティックの使用法から、やや保険治療思考で対応する必要がありますが、こういった症例の経験でも「ゼオスキンヘルス」の持つチカラを実感することになりました。

「他と違う」M22(日本ルミナス)によるフォトフェイシャル療法

他との違い:ショット数と照射パラメータの設定・照射出力が「本気治療」レベル

M22(日本ルミナス)導入してから4年以上経過します。皆さんご存知のとおり、フォトフェイシャルという単語は日本ルミナスの登録商標であり、M22を使う治療にしか使ってはいけない単語です。

導入初期はメーカー推奨のパラメータ、ショット数でDr施術していましたが、徐々にその設定をアレンジして出力やショット数も改善していきました。最終的に現在のマニュアルに行き着いたのですが、こちらも「お手本なく独自にアレンジしてきた」ので、他院の照射とはかなり違ってきているようです。(他院をみているわけではないのですが、他院も担当するメーカー担当さんから聞くと、うちはある種、異常なようです)

というのも、M22という機器は本体がそもそも高額であり、ハンドピースは高額消耗品(一定ショットで交換が必要)なので、それぞれのコストの償還を考慮して1名の合計ショット数と施術の価格設定を行うことがほとんどです。クリニックは商業施設なので、赤字ボランティアでは運営出来ないので、それが当然です。なので、ショット数と設定価格はどのクリニックもある一定の基準に近いことがほとんどです。短期で償還を考えるとショット数と価格に影響がでてきます。設定価格は相場があるので、どこで差がついていくかというと「ショット数」になってくるわけです。

なのでIPLはクリニックによっては「全顔50~70ショット」くらいで終わってしまうところもあるようです。10分もかかりません。多くても150ショットくらいのようです。M22はフィルターやパラメータを「目的にあわせて」変更できますが、その設定変更ごとに価格設定を作っているクリニックもあります。「シミのIPL ○○円、しわ・たるみのタイトニング 〇〇円」のように。だいたいそういう設定では「IPLは7−8回照射してから効果を実感できます」という説明をせざるを得ないと思います。当院のショット数、多分公開すると同業者にはびっくりされますが200ショット以上を必ず打っています。出力、パラメータも3ステップで上げていくのでかなり効果的です。

当院も当然償還は意識していますが、かなり長期で考えていたこと(正直、総合病院なのでM22での償還、利益性はあまり考えなくてよかった)も功を奏し、ショット数、パラメータをかなり「盛って」、価格はかなり抑えめに設定することができました。保険治療のレーザー治療をイメージしながら、独自にショット数、設定をいじっていた結果、こうなったという感じです。

その結果、当院でのM22フォトフェイシャルは「1回の照射」でかなり改善反応が得られます。基本は2ヶ月に1回を勧めており、3回(半年)で徐々に出力を上げていき、それ以降は年1−2回でも十分と考えています。

「サロンクオリティ」超音波イオン導入(ENVIRON):Wビタミン

イオン導入はENVIRONの超音波イオン導入の1時間コースを推奨してきました。こちらも1名必ず1時間使って対応しています。ジェルを「通常推奨量より多めに」使用するよう設定しており、超音波イオン導入をほうれい線、目の下、額、鼻など、重点的に行い、その後気になる部位をしっかりビタミン導入、最後にジェルを再び塗り足してアルジネートパックでイオン導入を行います。

ホームケアは自分の市販品で、超音波イオン導入のみ半年通院した方の写真before afterを見て、「目元の色素沈着が劇的に改善している」ことがわかりました。地道な治療ですが、通院の楽しみも得られる「安心できる施術」の一つです。

美容医療は「痛い治療」が多い中、Wビタミンはとても気持ちの良い治療なのでリピートが多いです。

「保険診療のノウハウで」各種レーザー治療(Qルビー、V-beam2、スキャナ付きCO2)

保険診療で「レーザー外来」を実施しています。太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、外傷性刺青に対してQルビー治療を、いちご状血管腫、単純性血管腫、毛細血管拡張症に対してはV-BEAM2による色素レーザー治療を行っています。

スキャナ付きCO2レーザーも保有しているため、これら3台を活用して「美容治療」にも役立てています。

保険治療で照射して慣れているので、美容のシミ・赤ら顔に対してもしっかり効果がでる出力でガツガツと当てています。

レーザー分野指導医の資格も2021年には取得しました。(これについてはなんの役に立つかよくわかりませんが・・)なんとなく安心してもらえたらと思い、取得してみました。

総合病院における美容診療の存在意義

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総合病院での美容診療は、その意義の1つとして「美容専門クリニックに行くのが敷居が高い」と感じる人達に、美容を身近に感じていただけるよう、敷居を低くお迎えするという役割があります。高齢者、予算が低めの方、病気を抱えている方、病気の延長で美容治療を行いたい方(抗がん剤で色素沈着がでた)など、美容クリニックには受診しづらいように感じられる方も、総合病院の美容であれば気軽に相談しに来ていただけると思います。

2つ目は、「肌のトラブル(きれいになりたいわけではない)だが保険が通らない問題を自費で治療として解決する」という役割。たとえば擦りむき怪我のあとが色素沈着になったような方。治したいけれど保険は通りません。こういった方もわざわざ美容クリニックには行きづらいようです。総合病院の美容診療がお力になれます。

3つ目は、「他院(美容)クリニックでのトラブル症例、合併症に対して、すこしでも改善できるように治療していく」ことだと思います。同じクリニックに相談するのが筋ですが、対応してもらえなくて途方にくれているようなとき、総合病院の美容は安心感があると思います。状況によっては保険診療で対応出来る場合もあります。(感染、皮膚壊死など重篤な状況の場合)

来年に向けてのお知らせ

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明日から2022年が始まります。来年は「チャレンジ・変革の年」です。これまで以上に大きなチャレンジを考えています。1月2日のブログで詳細はお伝えしようと思います。お正月の空いた時間で、是非御覧ください。

本年も「或る形成外科」にアクセスいただき、ありがとうございました。来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

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