形成外科後期研修時に役立つ教科書【形成外科医の引き出し⑨】

【はじめに:『形成外科医の引き出し』について】
形成外科学会認定指導医(医局無所属,医師17年目,皮膚腫瘍外科分野指導医,創傷外科分野指導医)による形成外科保険診療・美容診療の外来診療のポイントを疾患別にまとめています。形成外科医・皮膚外科医を志す若手の医師向けに書いていますので、一般の方には難しい表現もあるかもしれません。ご了承ください。

形成外科後期研修時に役立つ教科書

今回は外来診療のポイントとは異なる内容ですが、Twitterに「3年目の形成外科後期研修までに読んでおくと良い書籍ってありますか?」という、質問が届き、非常に良い質問だと思ったので、Twitterでの回答に少し追加してブログ記事にしてみたいと思います。

というのも個人的に「教科書マニア」なくらい、形成外科の書籍は買い揃えています。多分保険絡みの教科書はほとんど持っているんじゃないでしょうか。 形成外科は多様な疾患を守備範囲にかかえているため、1領域ごとにおすすめの教科書、書籍があります。細かく言うと1疾患ごと、1術式ごとに「この教科書がいい!」とか「この論文のが良い!」という感じで、色々読み漁って実践に活かすのが自分流です。 若い先生型におすすめな教科書を個人的にいくつか挙げさせていただきます。

外傷形成外科(克誠堂出版)

 外傷、顔面骨骨折についてはこちらの教科書が非常にポイントをおさえており、好みです。お気に入りの一冊だったのでボロボロになり2冊目買ってしまったくらいです。

骨折の手術適応や、分類、考え方など非常にわかりやすくまとまっています。救急に呼ばれる頻度が高い先生は是非おすすめの1冊です。

超アトラス眼瞼手術―眼科・形成外科の考えるポイント―(全日本病院出版会)

https://www.zenniti.com/f/b/show/b01/674/zc01/8.html

 眼瞼下垂を含め、眼瞼に関するOPEについてはこちらが非常にわかりやすく、おすすめです。 内反症、外反症についても詳細に複数の手術手技が掲載されていて、また写真中心にわかりやすく書かれているのでイメージしやすいです。

眼瞼下垂は3−4年目の形成外科医では、まだ実経験が浅く、写真イラストを見ても、あまりイメージできないかもしれません。実際手術を経験してから、この教科書を見返すと「それまで以上」にこの教科書の良さがわかります。迷ったときには開く1冊です。

Grabb’s Encyclopedia of Flaps (洋書)

 皮弁のアイデアをさがしているときに見る本です。トリッキーな手技がたくさんあり、(洋書なので英語ですが)見ているだけで楽しくなります。

スタンダードな皮弁についても写真、イラストや挙上のポイントなど詳細に渡って記載されています。皮弁の選択に迷ったときにこの本を見ていると、皮弁の多様性に魅せられ、つい元々なんの目的で調べていたのかを忘れて、ペラペラとめくりながら時間が過ぎていきます。1時間でも2時間でも見ていられる教科書です。形成外科医を志すなら買って損はありません。

3年目で購入しましたが、その価格に手が震えました。

PEPARS(雑誌)

疾患ごとに最新の考え方や手技を特集されていて、非常に助かります。

「あー来週【〇〇】の手術あるなー」と思ったら、PEPARSの関連号を3−4冊探して、しっかり読んでおくとイメージが出来上がります。

ちなみに1巻から全て持っています。大切なコレクションになっています。 記念すべき1巻はオレンジの背表紙が肌色になって色あせています。

雑誌「形成外科」も3年目からずっと購入していますので、もう14年分位あるでしょう。本棚1棚では足りないくらいあります。そちらとPEPARSの関連号をあわせて読むと1テーマ7−8冊はあるので、勉強する内容には全く困りません。

形成外科専門医を取るまでは、1症例与えられたら文献10、教科書5冊は読むということを教えられてきました。誰が言ったか覚えていませんが、未だに胸に刺さっています。大切なことだと思います。

スキル外来手術アトラス(文光堂)

3−4年目くらいのときに非常に助けられた外来手術対応の書籍です。今はもうあまり見ませんが、若手の先生にはイメージがたくさん掲載されているので、おすすめです。

3−4年目の間は、大きな手術は上級医の先生と一緒にするので、本当に困るのは外来日帰り手術レベルの技術です。一人で放置されます。必死で勉強しても、テクニックがついてきません。形成外科の手術は技術が結果にモロにでます。技術は複数回手術するしかありませんが、知識は自分次第で拡充できます。

頑張って知識をたくさん入れて、少しでも早く基本手技から上達しましょう。