きずあとが膨らむ –ケロイドか肥厚性瘢痕か–

きずあとが膨らむ –ケロイドか肥厚性瘢痕か–

怪我の痕や手術の痕が膨らんで、痒みが出たり、痛みが出たりすることがあります。「ケロイド状に膨らんだ」などと表現することもありますが、本当の体質から発生している真の「ケロイド」は意外と少ないです。大半は「肥厚性瘢痕」と呼ばれる、体質に関係なく外力が影響して傷が膨らんだ状態であり、手術治療により改善が望めます。

ケロイドと肥厚性瘢痕の見分け方

両者は見た目だけでは区別が難しいと思います。定義としては、最初の傷の範囲を超えていない状態、すなわち傷の上だけが膨らんできて、傷の周りには広がっていかない瘢痕が「肥厚性瘢痕」であり、それとは異なり傷を超えて周りにどんどん広がっていく様な瘢痕が「ケロイド」です。

どちらも症状は似ています。痛みや痒みを伴うことが多く、治療後に再発しやすいという点でも似ています。

治療

①圧迫療法・固定療法

膨らんだ創部に対してスポンジを当ててテープなどで圧迫を継続する治療です。必ず効くわけではありませんが、うまく固定できると1−2ヶ月かけて徐々に膨らんできた瘢痕が平坦になってきます。テープで固定が必要なのでテープかぶれを起こしたりするデメリットもありますが、手間さえかければできる治療なので一度試してみる価値はあります。

瘢痕化が予想される創部に対しては、予防的に術後早期から傷の圧迫・固定に使用する被覆材を使用します。当院ではアルケアの「ピタシート」という製品を用いています。

②ステロイド含有テープ

痛みや痒みの症状を抑えたいときにはステロイド含有テープが有効です。ステロイドの薬剤の強さで2種の製品があります。

通常は「ドレニゾンテープ」を用います。もう少しステロイドの強度が強いテープとして「エクラープラスター」があります。ドレニゾンのほうがフィルム状の透明なテープなので、最初はこちらから使用してもらうことが多いです。もう少し強い効果が欲しい場合にはエクラープラスターに変更します。エクラープラスターのほうが少し厚みのある素材でできています。傷の状態に応じて使い分けています。

③手術療法

中には手術加療で切除して埋没縫合をしっかり効かせれば再発なく治癒する瘢痕もあります。外傷による瘢痕の場合は初期の傷が埋没縫合をしていない場合も多く、挫滅を伴う創部が保存的に治癒して肥厚性瘢痕を生じている様な場合には単純切除も効果的です。

外力に反応して傷が肥厚している部位に対しては単純に切除縫縮するだけでは再発する可能性が高くなります。外力を逃すためにZ形成術という手技を用いて治療します。直線の瘢痕よりもジグザグに縫い上げるZ形成術の方が外力が分散されるため、再発が抑制されます。見た目が幾何学的な傷跡になることが欠点です。

④放射線療法

真性ケロイドの場合、手術を行っただけでは容易に再燃してしまい、それどころか、もともとの傷の大きさを超えて再燃させてしまう場合もあります。どうしても真性ケロイドで手術を要する場合、手術の方が良いと判断した場合については術後電子線を照射します。術後早期の傷跡に電子線を照射すると、傷のケロイド化を抑制する作用が報告されています。色素沈着や皮膚障害などの合併症もあるため、適応を十分検討して行います。

傷跡の治療・相談は形成外科に受診しましょう!