下肢静脈瘤の血管内焼灼術

下肢静脈瘤の血管内焼灼術

<2020年6月13日:初回投稿、2020年9月5日リライト>

足の膝下(下腿)あたりに、血管がボコボコと浮き出てきていませんか?静脈が拡張してコブを作った状態で、「下肢静脈瘤」と言います。生駒市立病院では形成外科で治療を行なっています。最近では下肢静脈瘤の治療は「血管内焼灼術」という方法が主流です。皮膚を切らずに針(カテーテル)を刺し、悪くなった血管の中にカテーテルを通すことで治療が可能です。血管内焼灼術はどこの施設でもできるわけではなく、実施認定施設でのみ対応が可能です。症状と治療法、その後のケアについても紹介します。

下肢静脈瘤の病態と症状

下肢静脈瘤の原因になりやすい血管は主に2つ、足の付け根(鼠径部)から太ももの内側を通り、膝下内側に続いている「大伏在静脈」と、膝裏中央から下腿裏面を通り、足首まで続いている「小伏在静脈」です。

根本的な静脈瘤の「病態」は、一言で言うと「静脈の逆流」です。上記2本の血管は末梢から心臓に帰っていく血流を有していますが、血管内部の逆流防止弁が年齢やホルモンバランス、立ち仕事の負荷などで弱くなり、破綻することで血管内で血液の逆流が生じます。結果として、血液が渋滞を引き起こし、膝下で圧が高まり、血管の壁が膨らんでコブになります。

静脈瘤の症状で、もっとも多いのは「こむら返り」に悩まされることでしょう。夜中に足がつって目が覚めることはありませんか?1週間に何度も続くようなら一度調べてみるほうがいいかもしれません。

他にも、「足がだるい」「かゆみ・むずむず感」などの症状が出ることがあります。長期間治療しないでいると、慢性炎症状態を引き起こし「色素沈着」が出てきたり、小さな傷がなかなか治らない「鬱滞性潰瘍」につながることもあります。

静脈瘤で命を落とすことは、ほとんどありません。しかし、高齢者が静脈瘤を発症した場合、上記のような症状のため生活の質は低下し、歩行機能に影響する場合も見られます。足以外はお元気なのに、静脈瘤のせいで車椅子生活を余儀なくされ、そのまま寝たきりへ、という状況にもなりかねません。発見したら、治療をしておくことがよいでしょう。

血管内焼灼術の実際の流れ

静脈瘤は最近では血管内焼灼術という治療を行われることが多くなってきました。逆流を生じた血管の末梢からカテーテルを入れて、血管の根本付近から1本まるまる「中から焼却」して血管自体の流れをなくしてしまいます。

当然、その他の健常な血管には影響しないように、悪くなった血管だけを焼いて閉塞させてしまう治療です。以前は、鼠径部と膝下の2箇所を皮膚切開して、血管そのものを抜去する「ストリッピング 」という治療が主でしたが、ここ数年で血管内焼灼術のほうが圧倒的に多くなりました。

私の病院では1泊2日で治療を行なっています。日帰りで対応しているクリニックなどもあります。違いは「麻酔方法」です。私たちは入院可能な病院で治療を行なっていますので、足の付け根から下を痺れさせる「伝達麻酔」(大腿神経ブロック)で治療をしています。起きたままの治療で患者様の不安は少なく、呼吸などに影響もありませんので非常に安全です。デメリットは術後6時間ほどは歩けなくなるということで、入院が必要になります。翌朝麻酔が抜けて歩行が可能担っていることを確認して、処置を行ってから退院になります。術中もお話ししながらできますし、体への負担が少なく、高齢者でも安心して受けていただけます。

日帰りでやっているクリニックなどは「静脈麻酔」という点滴で寝かせる麻酔をしながら、寝ている間に施術を行い、覚醒後にその日のうちに帰宅するという手法で行なっていることが多いでしょう。

治療後のケア

術後は1週間後くらいまでは包帯で圧迫を継続します。シャワー浴は可能で、その時だけ包帯を外してOKにしています。1週間後からは、「弾性ストッキング」という加圧ソックスを履いてもらいます。市販品でいうところの「スリムウォーク」のような圧迫が効いた靴下です。

ストッキング様の素材のものと、普通の靴下素材のものがあり、男性の方には靴下タイプをお勧めしています。

術後1ヶ月は必ず履いてもらう様に指導しており、それ以後は「長距離おでかけするとき」や「立ち仕事」のときに履いてもらう様にお伝えしています。

弾性ストッキングはサイズ選びが重要です。当院では術後の方は1週間後の受診の際にくるぶしの周径と、下腿中央の周径を測定してサイズをきっちり選びますので、ご安心ください。病院の売店で購入できるように各種サイズを取り揃えております。