医療経営から見た形成外科の存在価値

<2020年6月20日 初回投稿、2020年9月28日 リライト>

医療経営から見た形成外科の存在価値

医師になった初期のころは、診療による経営的な貢献についてあまり考えたことはなく、とにかく受診される患者さんをどうやって快方に向かわせるか、手術をどう工夫するのかを考えていました。診療活動を「経営的な視点」で考えたことはあまりなかったように思います。現在働いている病院では部長職を与えられ、毎月診療の成績表のように損益をいただき、日々の診療スタイルの見直しや、新規患者さんの獲得に何をすべきかを考えるようになりました。

こういう医療経営的な「勉強」は医学部ではまったくありません。しかし現実には医療経営を考えながら業務を展開することは、形成外科にかかわらず医師にとって非常に大切なことであり、コロナ禍による患者減などから回復がなかなか見出せない現状の世の中の流れを見ても必要性を感じます。

形成外科という診療科の立場からみた「医療経営的な存在価値」を解説します。

形成外科は病院経営に貢献できているのか

ストレートに言いますと、「運営の仕方による」でしょう。形成外科が病院経営に貢献できる点を挙げていくと、

①体表面のトラブルに対して柔軟に対応できる。

具体的には、やけどや怪我など救急での外傷対応のその後をきっちり対応できる点や、粉瘤など皮膚にできたデキモノの感染トラブルの対応と後始末。褥瘡や糖尿病性潰瘍など治りにくい傷に対しても細やかな専門的治療を提供できます。

形成外科がない場合には外来で長らく処置で見ているような状態の患者さんも、入院や手術での治療に昇華して速やかに綺麗に治療できます。患者さんにもメリットがあり、病院経営的にも入院患者増・手術件数増はプラスに働くものと考えます。

②眼瞼下垂や下肢静脈瘤、レーザー治療など専門性の高い良性疾患に対応可能(患者層が厚い)

各科どの診療科も自科の専門性の高い領域があり、形成外科の場合は「眼瞼下垂」「レーザー」などに加え、近年では「下肢静脈瘤」が受診患者の多い領域になってきています。当然ですが「体表の皮膚・皮下腫瘍」が受診目的では最も多いジャンルです。これら良性疾患を有する患者さんの数は非常に多く、病院に足を運んでもらう一つのきっかけになっていると言えます。形成外科が存在意義をはっきするのはこれら特殊疾患をしっかり対応して、近隣地域から認知されてこそだと思います。

③美容治療に対応できる。

保険診療とは異なる需要の領域であり、保険診療を行う病院で有利な美容治療があります。外傷後の傷跡や色素沈着の改善、あざのレーザー治療での最後の仕上げ、手術後の傷跡をより綺麗に仕上げる、抗がん剤治療の副作用による色素沈着などがそれらに該当すると思います。最近は大学病院でも美容診療を展開しているところは多く、市中総合病院で美容診療を受けられるということは、病院にとっての新しい顧客層を開拓できるチャンスです。

経営貢献できるボーダーラインは

各病院ごとに人件費の配分や材料コストの状況は違うので一概には言えませんが、貢献できていると思えるボーダーラインは形成外科1名体制での場合、入院患者20人以上、外来患者数(1日)50人以上、月間手術件数50件くらいではないかと思っています。2−3名体制になれば、さらに患者増が必要です。

安定した運営や診療体制拡大には医療機器の購入や人件費も必要になってくるため、ボーダーラインは状況に応じて変化します。あくまで先に挙げた具体的数値は個人目標でもあります。当然、達成するために漫然と診療しているだけではなく、宣伝・広報・地域開業医との連携が必須になってくることは言うまでもありません。

厳しい現実

形成外科で先に述べたような入院患者数を維持すること、月間手術件数を維持することは正直非常に大変です。入院患者はほとんどが処置を要する患者になるため、朝早くから処置に時間を取られます。新規患者の確保のため外来診療を休むことはできません。一方で手術件数も維持するためには外来と別に手術対応の時間もスケジュールにしっかり確保しなければなりません。

手術を増やせば処置も増え、土日も処置は休むことなく対応を求められます。高齢者の入院が増えれば、その分急変患者の対応も増えて、夜間の呼び出し対応にも時間を使います。

うちでは現在は形成外科3人体制で運営していますので、非常に健全な体制になりましたが、昨年は1年間一人で運営していました。夏休みも冬休みもありませんでした。取りたいとも思わないように、仕事を楽しむことだけを考えて日々生活していたように思います。なんとか1年、黒字と赤字の間で運営できましたが、これがもう1年続くとなると体が持たなかったかもしれません。

形成外科の存在価値を高めるために

形成外科医として仕事をしてきて、気がつけば17年も経っています。いまだに医師のなかでも「形成外科」をよく知らない方がいます。それもこれも、形成外科の存在価値を高めることで、病院経営に貢献できるようにいろんな工夫をしていくことで、認知されていくものだと思います。

コロナ禍が医療にもたらした影響は、形成外科のような良性疾患を多く扱う診療科にとっては致命的と言えます。受診をなるべく少なくしようと考える患者さんたちに、選んでもらえるような「強み」をたくさん見つけて展開していく必要があると考えます。

いま自分が考えている「一般市中総合病院で形成外科の存在価値が高まるスキル」を挙げてみます。

・合併症が少なく、術後経過が綺麗な埋没縫合のスキル

・他科が困難とする難治性潰瘍を治癒させるスキル(植皮や皮弁、創部管理)

・眼瞼下垂症の手術技術と経験(挙筋前転術、眉下皮膚切除術)

・下肢静脈瘤の治療技術と経験(血管内焼灼術やエコー評価技術)

・美容のホームケア製品の知識とカウンセリング力(レーザー・IPLの知識があればなお良し)

・救急外傷への対応技術(顔面骨骨折や体表の外傷治療)

・安定したマイクロサージャリー(顕微鏡を用いた手技)技術

医局に縛られない形成外科医を求めています。

自分自身が医局から離れ、現在無所属で診療をしています。医局の良さもありますが、無所属の良さも(医者なら言わずともわかるでしょうが)あります。無所属で勤務する形成外科医はそれほど多くありませんが、私の近くには結構います。新専門医制度ができて、医局に属さなければ専門医を取得できないような流れになってしまい、無所属の立場はより厳しい状況になりました。現在は旧制度の「認定施設」を維持しているので、新専門医制度が適応になる以前の先生は当院でも専門医取得が可能です。当然専門医に興味がなく、スキルを磨いて開業したいという方の「スキルアップ」施設としても当院は役立つと思います。

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