患者満足度の高い外来診療

以前の職場では患者満足度向上のための委員会に在籍させていただき、色々と活動していました。患者アンケートの反省や、いろんなイベントの企画など、会議もたくさん行い、スタッフで検討しました。入院と外来では問題点も異なり、対策も変わってきます。今回は「外来診療」での満足度向上にポイントを置いて解説します。

診察+αの話題作り

診察時には患者さんの主訴に対して、視診・触診・検査などを行い、治療方針について話します。毎日数十人単位で診察を行い、それを繰り返していると、流れ作業のようにテキパキとこなせるようになります。こちらは多数訪れる患者に対して、朝の3時間程度の間、常に「解答」を導き出して、お伝えするというような繰り返し業務になってきます。

安定している人や、特に複雑な説明が不要な人は、「問題ないですね」で終わってしまい、すぐ次の方の診察に入ってしまいます。外来が混んでくると「待たせないように」という配慮から5分以下診療が正当化されてきてしまいます。

患者さん側からすれば、仕事をわざわざ休んで来院し、30分ほど待たされた結果、診察の順番が回ってきて、やっと診察室に入ったとたん「問題ないですね」の一言で終了になります。病気や怪我が落ち着いている安心感は得られるでしょうが、なんとなく「もやっ」とするでしょう。

落ち着いている患者さんの場合、あまりに時間がないときは難しい方法ですが、できる限り「+α」の話題を話すようにしています。常連の方はカルテに色々背景を描いておくと助かります。例えば趣味が「ゴルフ」だとか、「来月海外に旅行に行く」だとか、「お孫さんの結婚式がある」だとか、診療の過程で患者さんが話した内容から「+α」を見つけたら、カルテの隅にそれとなく記載しておきます。

正直、毎日40-50人、週に200人、月に800人程度の患者さんを診察していると一人ずつの細かいお話はよっぽどのかかりつけの方でないと覚えていません。忙しい診療のなかで「+α」の話題を見つけて話す余裕が出ると、患者さんの満足度は上がっていきます。

医師の業務「あえて見える化」

患者さんは外来受診時には予約を取ったり、当日飛び込みで受診されたり、様々ですが、どこの病院でも大抵は「待ち時間」が存在し、なかには1時間−2時間の待ち時間があるような人気の外来もあります。単純に「待たせない外来」にしたいところですが、医師やスタッフの対応人数を受診数が超えている場合が多く、どうやっても「待ち時間」は解消しづらい場合があります。

とにかくテキパキと外来をこなしていくしかないのですが、よく待ち時間の解消方法として言われているのが、「業務の見える化」です。例えば、受付に「現在四人待ち、待ち時間30分程度」などと掲示しているようなケースがそれにあたります。待ち時間が「見える」と、少し席を外したりも出来ますし、その後の予定も立てやすくなります。クリニックなどでは「サイネージ」などで表示したり、混み具合を携帯アプリでお伝えしたりと様々なサービスが存在します。

そういったシステムは非常によいのですが、総合病院ではなかなか導入が難しいのが現状です。大型施設であれば、導入費用もかなりかかるためです。

最近、簡単にできる外来診療の「業務見える化」の一つとして、「待っている患者さんに医師の業務が見える」ようにしています。総合病院では診療が終わると、患者さんに予約券や伝票のファイルをお渡しして会計に行ってもらうようお伝えする流れになりますが、このファイルは大抵事務側でお渡ししていることが多く、医師はとにかく患者の待合スペースから見えない部屋の中に閉じこもったままで、診察のときに初めて目にするという病院が多いと思います。

この「会計ファイルのお渡しを医師自身で行う」と、一つの「業務見える化」が達成できます。若干手間はありますが、渡すだけですので、それほど時間はかかりません。患者さんの待合にあえて医師がおもむき、ファイルを手渡して、「これをもって1Fの会計に行ってください。お大事に」と伝えてあげることで、その他の待たされている患者さんも「この先生が診療しているのだな」とか、「結構忙しそうだな」、「終わった後はああいう流れなんだな」など思慮が生まれます。

ESなくしてCSなし

患者さんの満足度のことは「Customer Satisfaction:CS(顧客満足度)」と呼びます。CS向上のために必ず考えなければならないのが「Employee Satisfaction:ES(従業員満足度)」です。「ESなくして CSなし」とも言われるように、スタッフの満足度が低い病院では十分な患者さん対応は望めません。

病院全体のESを向上することは大変です。病院院長や幹部の方々の責任といえるでしょう。一診療科の部長ごときで全体の満足度向上に口を出すことはできません。診療科、形成外科部門としての満足度向上なら、多少は貢献できるかもしれないと考えて、休憩室の整備やスタッフの業務環境改善など、細かいところまでなるべく気を配れるよう心がけています。

まだまだ改善点は多いですが、まずはスタッフの満足度がもう少し上がるように努力したいと思います。