褥瘡回診の改革:回診リーダー制の導入

形成外科で院内の褥瘡対策委員会を担っている施設は多いと思います。当院も週1回の褥瘡回診と、月1回の褥瘡対策委員会を担当しており、特に褥瘡回診では毎週木曜日、1時間という規定時間内に院内の褥瘡保有患者をすべて回診するようにしています。多い時には5-6名、少ない時には2-3名の褥瘡保有患者を処置・診察して、評価を行い、治療方針や栄養対策、ポジショニング指導などを行なっています。

当院の褥瘡回診は以前は一般的なスタイルで、医師・看護師・その他コメディカルの集団でベッドサイドまで往診して、医師の指示のもとにスタッフが記録、処置をする、そういうスタイルの褥瘡回診でした。とくに大きな問題はなかったのですが、いくつか不安要素もありました。

たとえば「医師が不在の場合、スタッフが独自に動けるのだろうか」という点です。またコメディカルを引き連れて回診を回っていますが、中には「結構退屈そうにしているスタッフ」も見られたことも気になっていました。

褥瘡回診の時間をもっと有意義なものにならないか検討した結果として、「回診リーダー制」という新しいスタイルを導入し、褥瘡回診のスタイルチェンジを行なってみました。今回は当院ですでに1年以上継続して、すっかり定着した「褥瘡回診リーダー制」について解説します。

医師の監修のもとで、回診リーダーが評価と治療を決める

「褥瘡回診リーダー制」とは、看護師1名を「回診リーダー」に任命します。回診リーダーが行うべきことは次の5点です。

①他の回診スタッフへの指示

②褥瘡保有患者の創部DESIGN-R評価

③創に対する治療決定(処置の内容を決める)

④褥瘡の発生要因についての考察

⑤今後1週後の回診までに注意すべき点の考察

結構忙しくて、最初は戸惑いますが2−3回もするとすぐに慣れてきます。①については周りのスタッフが理解できれば省略できる点でもあります。ポイントは「治療を看護師が決める」という点と、「なぜその褥瘡が発生したのか」を常に考えて「対策を練る」習慣を身につけるという点です。

従来の褥瘡回診では医師が指示をしていたポイントですが、看護師に決めてもらいます。当然、最初はどうしたらよいのかわからなくて困惑します。医師はあくまでアドバイス(ヒント)を提供するような位置付けでしっかりとfollow upしていきます。間違った治療を選択しないように監修するわけです。

当院では最初は4択クイズのような「治療方針決定」を行なっていました。

①ワセリン軟膏 ②ユーパスタ軟膏 ③ゲーベン・クリーム ④被覆材(ハイドロサイトなど)

褥瘡治療でよく用いられる治療の選択肢です。創部の状態からどれが最適かを考えます。ここで大切なのは「正解は1つではない」ということです。創部の状態によっては浸出液がやや多く感じられ、ユーパスタ処置が妥当かなと思うような潰瘍であっても、1週間ワセリン処置にすると、意外と治癒遅延が改善して治り始めるようなときもあります。逆もあり、ワセリンで継続していた方にユーパスタ・ゲーベンを短期間使用すると除菌がすすんで治癒が進むこともあります。被覆材がいい働きをしてくれる時もありますが、ワセリン塗ってオムツ保護というだけで治ることもあります。

すなわち、4択のいずれも使いやすい選択肢なのでどれを選んでも正解になっている場合もあるわけです。さすがに浸出液がかなり多いような傷に、それを受けきれない被覆材を選択したりする場合は医師がストップをかけます。医師は潰瘍の状態をしっかり観察し、回診リーダーが選ぶ選択肢が「明らかな間違い」でないかどうかを検討し、妥当な選択であればそのまま採用します。

実際は医師が監修しているため、よっぽど間違った方向には行きません。慣れてくれば選択肢の4択は徐々に多様化させていきます。当院では「ユーパスタ・オルセノン混合軟膏」や「リフラップ ・テラジアパスタ混合軟膏」、被覆材もエスアイエイドやハイドロサイト、デブリードマンが必要なら特定看護師に依頼といったように治療の選択肢は4択のレベルから、完全に自由選択できるレベルにまで拡張しています。

役割分担の明確化

リーダー以外のスタッフは明確化された「役割」を分担しています。

①患者保持:横むけたり、足をあげたりして創部が観察しやすいように支える役

②処置:回診リーダーの指示の通り創部を処置する役

③計測・写真撮影:創部の大きさをメジャーで測り写真記録を取る役

④カート側:回診カートからガーゼや軟膏、被覆材を処置ナースに受け渡す役

⑤記録:回診リーダーが読み上げるDESIGN-Rや、治療方針をメモに記録をとり、回診後にまとめて電子カルテと「回診ノート」に整理する役

①〜④は各病棟の看護師が担当します。当院では各病棟の褥瘡委員Nsが回診に参加しているため、看護師は5名います。あと薬剤師1名、医事課1名、WOC看護師、医師の9名で回っています。回診リーダーは、実際回診を回っている病棟の褥瘡委員Nsが担当し、それ以外の看護師4名で①〜④を担当します。⑤の記録係は薬剤師と医事課スタッフの2名で分担しています。

回診リーダーは一切、患者さんには触りません。他の看護師に指示を出して創部を展開してもらい、処置を行なってもらいます。なので他の看護師がすべきことは回診リーダーは自然にわかってきます。リーダー以外の看護師は、自分の病棟に回診が回ってきた時には自分が回診リーダーを担当するので、結果として全員が「動き方」を把握できるようになります。慣れてくると自然と各看護師が役割を見つけて担当するようになります。慣れないうちは全体がスムーズに動けるように医師が「アドバイス」します。

医師とWOCは基本的にはアドバイスのみを担当します。必要な時以外は発言しません。特に回診リーダーの選択が正しいと思うときには一切、口出ししません。最初は助言が多かったですが、最近はまったく発言しなくても回診がいい感じで進んでいくので医師は大変楽になります。

評価と治療への責任

回診リーダーによるDESIGN-Rの評価については、医師はたとえ間違っていると感じても訂正しません。回診リーダーの自己評価を最大限に尊重します。治療方針は患者さんに実害がでては困るので、それとなく誘導したり、訂正したりしますが、DESIGN-Rについては「どんどん間違えていいよ」くらいのスタンスで対応しています。

DESIGN-Rの評価は微妙なラインがたくさんあります。D3なのかDUなのか。浸出液を多くて1日2回交換を有すると考えるのか、1日1回でいいと考えるのか。感染炎症のIなんて、I-1 局所の炎症兆候あり、I-3 局所のあきらかな炎症兆候あり、どうやって見極めれるでしょうか。医師でも意見が別れるところです。良性肉芽が50%?壊死組織が柔らかい、硬い?DESIGN-Rは正直なところ点数はどうでもいいと思っています。

大切なのは各項目を回診リーダーが自分で評価することです。医師の訂正が入ると思って気楽に評価するのと、自分の決定が訂正されずそのまま回診記録に反映されるとおもって評価するのとでは意味合いが違います。しっかり選択肢を吟味して、今の傷がどの評価に最も近いかを選択してもらい、リーダーの意見は訂正せずにそのまま記録します。

よっぽどの間違った評価のときは、回診後に個別に訂正しますが記録はそのままにします。あくまでその看護師はそのときそういう評価をしたというのも記録だと思います。回診の場で訂正することは、個々の看護師の意欲を削ぐ行為にもなりますので、こっそり指摘したり、それとなくヒントをだして自分で気づけるようにしています。

褥瘡に対する向き合い方も変わる

褥瘡回診リーダー制を実施してから、看護師の褥瘡回診への向き合い方に変化が見られたように感じています。自分で評価を行い、処置を決めたことで、その後の経過が気になるようになるからです。「自分の決めた処置が正しかったのだろうか・・・」という不安もあり、それ以後のその患者さんの褥瘡への見方が変わってきます。治療がうまく進んでいると翌週のカンファレンスでよい評価をつけることができます。自分で決めた処置だからこそ、2-3日でうまくいっていないときは「変更したほうがいいのでは?」という気持ちも芽生えます。

仮に医師の指示で処置が決まっていれば、中にはあまり深く考えずに漫然と処置を継続する人もいるかもしれません。

治療を決めて、観察して、評価する。これを繰り返しているうちに、褥瘡に対する向き合い方が変わってきます。

当初は褥瘡回診での医師の負担を減らそうと考え、整えた「回診リーダー制」でしたが、実行してみれば「看護教育の場」になっています。想定外でしたが、非常に好評でもあり、褥瘡回診の運営に悩まれている方にお勧めします。

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