医療業界の「古い考え」からの脱却

医療業界、とくに「医師の働き方」において、一般の職種では当たり前のことが通用しない場合が多々あります。本来突き詰めていくと問題があるような勤務体制でも、「患者さんのため」という大義名分を掲げ、「善」のイメージに変換されてしまい、知らぬうちにそれが当たり前になってしまいます。形成外科医はまだマシなほうかもしれません。一般の方からすると「救急が忙しいところほど大変?」と思うかもしれませんが、一概にそうでもありません。勤務時間内の過酷さはありますが、救急が忙しい施設であっても、スタッフ数が多く、診療科の責任者がしっかりしていれば、各スタッフの業務のオンオフがきちんと管理されています。当然勤務時は激務ですが、勤務外はゆっくりできます。

問題はスタッフが少ない場合です。例えば自分の場合も、昨年1年間は一人で形成外科を運営していました。外来診療・入院診療・手術・その他運営のための雑務・病院運営のための委員会など、すべて一人で行う必要性がありました。自分以外だれもいませんので夏休みも冬休みも当たり前ですが無い状態です。

一般の会社であれば、会社全体で問題に気づき、人事でヘルプが来たりするのでしょうが、医師の環境は「代わり」がいません。大病院にあたるスタッフの多い病院なら診療科ごとに複数名の医師がいますが、医師の少ない病院であれば特殊診療科はどこも同じような状況でしょう。

1年間、一人で淡々と仕事をしていました。あまり「忙しい」と思わないように、意識しないように毎日を過ごしていました。幸い4月から新任の先生が3名も来ていただけたため、チーム医療体制をとることができるようになり、負担も軽減しました。何より一人で運営しているときよりも、「安全性」が高まった気がします。

これからチーム医療をより良い体制にしていくためにやるべきこと、考えていることをまとめました。

遅くまでの無償残業は当たり前という「ブラック思考」の撤廃

病院で勤務していると看護師、コメディカルは勤務時間が過ぎると残業となり、時間外給与が発生しますが、医師は発生しません。当然緊急手術や、夜間呼び出しは時間外が発生しますが、業務が延長して17時を回っても、「或る一定の基準」を超えない限り時間外が出ないシステムになっています。文句を言おうにも入職時の規約にそれとなく記載されており、入職時にサインをしているのでそれが当たり前のように扱われます。こういった基準は病院ごとに様々で、良心的な病院はきちんと時間外をつければ対応してもらえますが、診療科責任者の裁量や病院事務側の裁量で「多少の延長は日中業務の範囲内」のように扱われます。われわれが無頓着なのも問題なのですが、いまさら「形成外科だけ17時以降の業務にきちんと時間外を出してくれ」など病院のルールを変えることは非常に困難です。

一人体制のときは大体夜間は遅くまでカルテ記載や入院患者の検査オーダー、処方オーダー、手術オーダー、病状説明などいろいろ仕事が残っていました。現在の複数医師体制であれば、日中にうまく分担して全員が17時−18時での帰宅を目指す(夜間呼び出しは当番制:時間外勤務発生)ことが可能です。

「遅くまでの無償残業を少しでも減らす」ことが求められます。

患者さんに休みはないので主治医も休まないという「劣悪環境」の改善

「患者さんは入院治療に休みはなく、主治医は当然平日・土日も昼夜問わず対応する。」一見患者さん目線に立ってみれば、いい話に聞こえそうですが、医師の立場からすると「劣悪環境」になってしまいます。これも古い考え方だと思います。いまどきの若い先生方には理解してもらえません。

患者さんの病態に休みはなく、重症や術後早期などは細やかな対応が求められます。主治医にすべての責任や業務を任せず、チーム体制で対応することで個々の負担は減り、主治医も解放されます。それには「チーム内の医師全員が、診療科の患者全員のことを把握しておく必要性」があります。情報共有が大切で、頻繁に入院患者全体のカンファレンスをチーム全員で行うことが求められます。

医師には有給休暇は無いという「既成概念」の修正

2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。医師には有給休暇をとる習慣があまりありません。連日の多忙な業務、前述した患者さんに対する主治医の責任などもあり、夏休みや年末年始の休み以外には、転勤・異動のタイミングでの引越し休みなどで少し有給休暇を消費する程度です。

数年勤務を継続していくと、年間の有給休暇は消費されず徐々に溜まっていきます。2年を過ぎると使用していない有給休暇は消滅していきます。医師の中には有給が消えていっていることすら気づかずに過ごしている方も多いと思います。(自分もその一人でした)

有給休暇は半年勤務後に付与されるので、当施設でも半年後より各スタッフが確実に有給休暇を消費できるような体制づくりを目指します。当然温存したい方はそれもOKですが、確実に全スタッフが有給を希望通り申請できる環境を作っていきたいと考えています。

働きやすい環境づくりはなかなか実現させるのは難しいものですが、少しずつでも「良い環境」に近づける努力をしていれば、気がつけば非常に働きやすい職場になっているものだと思っています。

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