足の血流を評価する方法(下肢動脈の評価)

足の血流を評価する方法

足の血流といっても、心臓から送り出され末梢の細胞まで血液を行き渡らせる「動脈」と、その反対で末梢から酸素を送り届けた後の血液を回収して心臓に戻してくる「静脈」の2種の血管の血流があります。

詳細に言えば、第3の血管である「リンパ管」もありますが、ここでは「動脈」についての評価方法について解説します。

動脈の評価には「ABI:Ankle Brachial Pressure Index(足関節上腕血圧比)」と「SPP:Skin Perfusion Pressure)皮膚灌流圧」、下肢動脈エコー、CT Angiography、MR Angiographyなどを一般的に使用します。

(ちなみに静脈の評価は、ドップラーエコー、下肢静脈エコーで評価します。リンパ管はリンパシンチグラフィ、ICG蛍光造影、リンパ管造影などの方法があります。)

ABI:Ankle Brachial Pressure Index(足関節上腕血圧比)

ABI検査は比較的簡単にできる下肢の動脈血流の評価手技です。両前腕と両下腿に血圧計を巻いて、四肢の血圧を同時に測ることで、ABI(足関節上腕血圧比)とPWV(脈波伝播速度)が計測できます。

ABI(足関節上腕血圧比):動脈硬化による狭窄や閉塞を診断する指標
ABI0.9以下は症状の有無にかかわらず、閉塞性動脈硬化症を疑います。実際、高度な動脈狭窄や動脈閉塞が存在する場合は0.5とか0.7とか非常に低い数値が出ます。そういった場合はSPPと下肢動脈エコーでより詳細に血流評価を行います。

PWV(脈波伝播速度):動脈壁の硬さを評価する指標
動脈硬化が進むと心臓の拍動が手足に速く伝わるのでPWVは速くなります
PWV1400cm/s以上は動脈硬化が疑われます。しかし狭窄が高度な場合や閉塞している場合、PWVは低値になることがあるため、この値はあまり参考にしていません。

SPP:Skin Perfusion Pressure)皮膚灌流圧

SPPは皮膚の「測定した部位」の皮膚灌流を数値化する検査です。その部位に傷ができた時に、「治癒するために必要十分な血流が流れているのか、流れていないのか」が判断できます。

具体的な測定法です。まず、ベッドに仰向けに寝て、血流を調べたい場所にレーザーセンサと血圧計の帯(カフ)を巻きます。当院では足背・足底・下腿後面の3箇所に場所を決めて評価を行っています。カフに空気を入れて膨らませ、圧により一旦血流を遮断してから徐々に空気を抜いていき、血流が再開してくる圧(皮膚灌流圧)をセンサーにより測定します。

ABIよりも詳細な血流分布が数値で得られるため、重症虚血肢の血流評価や壊死した下肢の切断レベルの検討などに用いられます。SPPが40mmHg以下の場合、その部位は治癒が得られない可能性が高く、切断術を行なっても創部は治癒せず離開したり、さらに壊死が進んでしまいます。そのような場合はSPPの値が改善するように、手術前に循環器科に依頼してカテーテルによる血管形成術を行なってもらいます。

欠点は1回足底するのに4−5分の安静を要することです。認知症があり動いてしまう患者さんや、下肢虚血による疼痛が強い患者さんでは、カフの締め付け時に体動を生じて正確な値が評価できません。本当に値が欲しい患者さんで「使えない」場合も多い検査です。

下肢動脈エコー

超音波エコー機器を用いて下肢動脈の血流を評価する方法です。当院では下肢の動脈を「鼠径部」「膝窩部」「足関節部」の3部位で評価しています。

鼠径部では「浅大腿動脈」、膝窩部では「膝窩動脈」、足関節部では「前脛骨動脈」「後脛骨動脈」「腓骨動脈」の3本の血流を評価します。

評価はカラードップラーで血管内腔の流れを確認し、長軸像でパルスドップラーによる流速・波形を確認し「RI : Resistance index(抵抗指数)」を測定します。RIとSPPの値は相関しており、RIが0.7以下の場合、SPPが40mmHg以下やそれに近い状態であることが考えられます。SPPを保有していない施設でも、この方法で下肢の血流評価が可能です。

ABIやSPPと異なり、カフの圧迫はありません。疼痛を伴う虚血肢でもプローベを当てるだけなので測定が可能です。また認知症がある患者でも、プローベで血管の波形が2−3パルス分だけ拾えれば計測が可能です。

難点を言えば、「技術的にやや難しい」という点でしょうか。慣れればそれほど難しくはありませんが、エコーを当ててカラードップラーを入れて、長軸でパルスドップラーを綺麗に描出するのは、多少訓練が必要になります。

CT Angiography

造影剤を点滴しながらCTを撮影します。血管を内部から造影できるため、動脈硬化による狭窄部位や閉塞の位置、血管の形態などが視覚的に評価できるため、非常に有用です。

特にカテーテルによる血管形成が可能かどうか、どの部位を拡張させるのか、下腿3分枝のどれがどの部位で閉塞しているのかなど、CT-Angiographyでしか評価できない情報は多く、重要な手術の前には行なっておきたい検査の一つです。

メリットは多くありますが、造影剤を用いる検査であるため腎臓の機能が悪い方や、造影剤のアレルギーがある方には使用できません。

MR Angiography

腎機能が悪い方でCT-Aが撮影できない場合にはMR-Angiographyを検討します。造影剤を用いない「非造影MR angiography」という撮影法であれば、腎機能に影響なく腹部〜下肢の動脈の評価が可能です。CT-Aと似たような画像になりますが、解像度はやはり造影剤を用いたCT-Aのほうが良く、石灰化の強い症例では上手く評価できない場合もあります。

あくまで血管形成術のための参考データとしてや、エコーでの閉塞状況を画像的にも確認したりするために撮影します。