褥瘡の原因は「ずれ」か「圧」で考える

褥瘡の治療は「原因」を考えることから

褥瘡の治療といえば、創部につける軟膏であったり、被覆材を良いものを使ったり、持続陰圧療法で肉芽化を進めたり、手術によるデブリードマン、皮弁形成術などを思い浮かべます。それらは局所の創部への対応であり、あくまで「褥瘡が発生した結果に対する治療」です。当然、それぞれがとても大切な治療ですが、なにより「発生原因」をまずは考えて、そこに対処することが非常に重要です。

なぜなら、原因が除去されていなければ、いくら局所の治療を行っても改善しない場合もあるからです。

たとえば仙骨の褥瘡で考えてみてください。寝たきりで体位変換不良で仙骨部の圧迫が数時間持続したために創部が虚血に至り、皮膚壊死にまで至った結果として生じた褥瘡であれば、原因は「体位変換不良による除圧不足」です。創部の処置を細かく行ったとしても、体位変換に対するサポートやエアマットレスなどでの仙骨部除圧を行わなければ改善に向かいません。

褥瘡を見らた、「どういう原因で発生したか」を常に考え、そこにサポートを入れることを忘れず徹底します。

発生原因は細かく追求すると、非常に複雑になります。たとえば先ほどの仙骨部の例で言えば、「体位変換不足」が原因かもしれませんし、「ベッドのマットレスの適合不良」とも取れます。痩せている方なら「栄養の不良」も影響しているかもしれません。「排泄物による皮膚の過剰浸軟」なども一因になりえます。

それらの細かい要因も実は治療上では大切なことなので、褥瘡治療の長期入院中に一つずつ解決していく必要があります。複数の要素が改善したとき、或る一線を過ぎると傷が劇的に上向きに変わるときがあります。そうなれば保存的治療の速度も上がり、外科的治療の適応ともなるため、一気に治してしまうことが可能になります。

褥瘡発生に影響したたくさんの原因を考える上で、まず最初に考えるべきことは「ずれ」による褥瘡なのか、「圧」による褥瘡なのかという2択です。ここを抑えた上で、それぞれの患者さんの環境要素・基礎疾患・創部環境などをみて、複雑に絡み合った原因を除去していきましょう。

「圧」が原因の褥瘡

圧が原因の褥瘡はわかりやすいです。骨突出したところの真下にできている深い褥瘡など、たいていは圧による褥瘡です。仙骨の出っ張りの頂点が寝ているときにベッドにあたり大きな深い褥瘡ができたりすると「圧」褥瘡です。

圧の褥瘡では、骨と下床(ベッドや布団)に挟まれて、間の皮膚・皮下組織・筋層が完全に血流障害を起こします。挟まれている時間や圧の強さによって組織の障害の程度は変わりますが、大抵は長時間同じ体制で挟まれて限界を超えて褥瘡が発生するので、深部まで至る深い褥瘡となって現れます。

組織の壊死は一気に表出することはありません。最初は皮膚の表面が変色しているように見え、水泡ができ徐々に深部の脂肪層や筋層も壊死融解していきます。どのタイミングで病院に来院されるかも様々ですが、毎日観察している場合は徐々に褥瘡が悪化しているように見えます。実際は最初に圧迫障害を生じた時に圧で挟まれた組織の細胞は死滅しており、時間をかけて自己融解してきているだけなので「悪化」というわけではなく「本来の障害範囲がはっきりしてきている」だけです。

圧の褥瘡に対してはまずは「除圧」を徹底します。体位変換のスケジュールを確認、電動エアマットレスのモードの確認、ポジショニングクッションなどでの除圧、日中に側臥位リハビリを組み込むなど、患部が除圧されるように環境因子を変えていくことが非常に大切です。処置や手術はそれらが整っていなければ効果がでません。

とにかく「圧の褥瘡」は深くなります。壊死組織を除去していくと骨膜まで壊死に至り、骨皮質が露出するところまで掘れてしまうこともよく見られます。中途半端に壊死組織を残しても感染源になるだけです。壊死組織からは肉芽は出ませんので、壊死組織が残っていると治癒が遅れます。かといって一気にすべて除去するのも侵襲が大きくあまり望ましくありません。なるべく早めに壊死組織の「底」と「境界」をはっきりさせるために、全身状態を安定させながら適宜デブリードマンを進めていくことが重要です。生きた組織(境界)に達するとわずかな出血が見られます。手間暇かけて細かく生きた組織の境目を綺麗に掃除して、肉芽が萌出してくるようになれば、持続陰圧療法で一気に肉芽化を早めます。小さい褥瘡なら早期に皮弁形成を、巨大な褥瘡であれば肉芽化に時間をかけて植皮術などで範囲を少しずつ減らしていきます。

圧の褥瘡は重度になる場合が多く要注意です。

「ずれ」が原因の褥瘡

圧の褥瘡に対して、「ずれ」が原因の褥瘡は、骨の位置と少しずれた場所に生じることが多いと言えます。

よくあるシチュエーションとしては、寝たきりの患者さんが肺炎や尿路感染など全身状態が悪化して入院、その後少し体調が戻り、経口摂取が再開となりギャッジアップをするようになった途端に仙骨やや上のあたり、棘突起のサイド、踵などに水疱が生じる形で発生します。ギャッジアップで背中を起こした時に、お尻・背中で生じるずれ力(剪断応力)が「ずれ褥瘡」につながります。、膝屈曲位のまま踵がベッドに接地したままで体を起こすと少しずつ体幹が足の方向にずれて、踵に強くずれ力がかかり、踵に「ずれ褥瘡」が発生します。

大抵、ずれ褥瘡は消退しない発赤で発見され、水疱形成を生じます。あまり気づかれない状態がつづくと真皮に至る損傷や全層壊死にいたることもあります。

入院中でも褥瘡への配慮を怠ると発生しやすいのが、この「ずれ褥瘡」です。

電動エアマットレスの除圧は「圧の褥瘡」に対しては予防的に非常に有用ですが、「ずれ褥瘡」の予防にはあまり効果がありません。(無いよりはマシくらいです)

「ずれ褥瘡」の予防のためには、ギャッジアップ、体位変換を行った後には必ず体の下に手をすべらせる「圧抜き」を行うことが対策になります。自分で電動ベッドに横になって、寝返りを打たないまま電動ギャッジアップをしてもらうとよくわかるのですが、座位姿勢までギャッジアップしていくと背中、お尻に結構なズレる力がかかっていきます。体動が可能な方は気持ち悪くてお尻を右へ左へ動かせばズレは解消されるのですが、もともと寝たきりの方はそれができないためズレたままキープされてしまい、局所的に皮膚に強い圧が加わったままとなり、褥瘡が発生します。

「ずれ褥瘡」は「圧の褥瘡」に比べて浅く済むことが多いです。早めに対応すれば2週間程度で治癒することもあります。発生させないことが非常に大切ですが、早期発見して適切な管理で早期治癒させることも重要です。

実際にはもっと複雑な要因が絡み合う褥瘡の原因ですが、まずはシンプルに「圧」か「ずれ」か考えてみましょう。少しずつ引き出しを増やしていくと、褥瘡治療が謎解きのように思えて興味深くなってきます。

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