(2020/6/9初回、2021/1/18リライト)
爪水虫の効果的な治療
足の爪が濁っている。
足の爪が分厚く変形している。
足の爪の周りに白い粉がついて、一部が崩れてくる。
そういう症状でお悩みの方、爪の水虫の可能性があります。
最近は外用の爪水虫薬が効果的で、皮膚科からの薬を塗るだけの治療で治る方もいますが、一度分厚く変形してしまうと爪に薬が浸透しにくくなり難治化、結果として外用を塗りつづけても改善しません。
どんどんひどくなっているような方には、フットケア外来で行っている「フットケアドリル」による爪甲除去術が有効です。解説します。
爪水虫の原因は?
爪水虫は医学的には「爪白癬」と言われる、カビ(真菌)による感染症です。爪白癬になると、爪が徐々に濁り、分厚くなり、白い粉のようなクズが付着するようになります。
見た目はこの様な濁った爪、分厚い爪、まわりに白い粉が付着するような状態になります。放置していくと徐々に爪は変形して、最終的にはセミの抜け殻のような分厚い爪になってしまうことがあります。
変形の仕方は様々でときには巻き爪のような変形になり痛みを伴うこともあります。
爪水虫をあなどるな。放置すると危険な場合も。
爪水虫はそれほど急には進行しません。命に影響するような状況になることもごく稀です。
しかし、高齢者の方や免疫低下している方などで爪水虫をきっかけとして足に蜂窩織炎を生じたり、分厚くなった爪を引っ掛けたりするきっかけから、足趾の難治性潰瘍を生じたりすることがあります。
爪水虫により足の親指の爪が分厚く変形した状態で放置していると、階段で引っ掛けて爪の下がめくれ、血が溜まった状態になり、そこに細菌感染が生じてしまうことがあります。困って来院されたときには母趾全体が腫れていて、爪のすぐ下にいる骨まで溶けている状態、骨髄炎になってしまいます。
そういう場合は足全体に感染が及ばないように、入院にて母趾の切断術を行います。
分厚くなった爪水虫の効果的な治し方は?
一般的には皮膚科など受診されると、まず爪水虫の検査を行い、顕微鏡で菌が確認されたら塗り薬での治療をスタートします。軽症の爪水虫ならそれで治癒することもありますが、白癬菌は爪の一番深部に多く存在するため、上から塗布するだけではうまく浸透せず、なかなか効果が見られません。
私たちの施設では、分厚くなった爪水虫の爪に対しては、まずはフットケアドリルによる爪の削除処置を行います。彎曲・肥厚した爪を9割以上削除して、爪のレールの部分だけ薄く残します。そこに塗布型の爪水虫用の外用薬を使うと、非常に効果的です。見た目も即時的に良くなるので、お勧めです。
爪甲除去のときに白癬の顕微鏡検査を行います。白癬が陽性であれば塗布タイプの白癬治療薬を使用します。当院では「クレナフィン(科研製薬)」をよく処方しています。フットケアで削ったあとの残った爪にも爪白癬は残存しており、塗布した薬剤が染み込んで効果します。
当院のフットケア外来の方針としては、まずは1ヶ月ごとの2回、フットケアドリルによる爪甲除去を行います。そして自宅ではクレナフィンによる薬物療法を継続しながら3−4ヶ月ほど爪の生え方を観察します。
爪の基部がきれいになって生えてくれば除菌成功です。先端に伸びてくるまで観察しながら、追加でフットケアが必要なら再び1−2回ほど削る処置を加えます。
この方法で、6ヶ月ほどでかなり爪の状態は改善する方がほとんどです。爪による悩みがなくなり、患者様の満足度は非常に高くなります。
こういった「フットケアの治療」は、どこの形成外科でも対応しているわけではありません。事前にホームページや電話問い合わせなどで確認してから受診するようにしましょう。