静脈瘤の症状と治療法

静脈瘤の症状と治療法

下肢静脈瘤の症状の代表的なものは「夜間の頻繁なこむら返り」です。日中も足がだるくて、疲れやすいという訴えもあります。こむら返りは非常に苦痛を伴うので、手術治療の良い適応です。術後は皆さん、「もっと早くきて手術しておけばよかった」と言われます。手術が結構おもっていたよりも楽で、こむら返り1回よりも辛くないからでしょう。

次に「見た目のボコボコ膨らんだ下肢の血管」が気になるという相談が多いです。気が付きやすいですし、インパクトありますから他人に言われたりして来ることもあります。見た目のボコボコは全員がでるわけではありません。まったく見た目の血管の膨らみがない人でも、検査をすると静脈瘤の手術適応(伏在静脈の弁不全で血管内逆流が生じている)がある場合もよく見られます。

下腿に傷ができて広がって治らないという方は、静脈瘤を併存していることがあります。このタイプの相談では、結構進行して時間が経過していることも多く、不全交通枝の逆流に移行しており手術では治療できないような方も含まれてきます。当然、原因となる伏在静脈があれば手術治療で症状も改善が得られますので、なるべく早く相談に来てもらうほうが良いと思います。

下腿に蜘蛛の巣のような細い網目状の血管が浮き出てくるような状態を「蜘蛛の巣状静脈瘤」といいます。症状はあまりないのですが、治療を希望の場合は「硬化療法」の適応となります。細かい蜘蛛の巣の一つずつに硬化剤を注入して固めて消失させていきます。これも簡単な治療で日帰り30分程度で終わります。

血管内焼灼術(けっかんないしょうしゃく術)

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高周波による血管内焼灼術を実施しています。(レーザーによる血管内焼灼術もあります)2014年6月に保険適応されたもので、ラジオ波ともよばれます。

血管内に細いカテーテルを通し、高周波の熱を用いて血管内から逆流している「壊れた」静脈を焼いて、内腔を熱損傷させて閉塞させます。カテーテルの先端7cm部分(3㎝のカテーテルもあり)が加熱され、120℃の熱を発生させて、接している血管を焼きます。

治療時間も短く、スムーズにいけば30分程度、血管の穿刺や挿入に時間がかかっても1時間以内でおさまることがほとんどです。

下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術では従来のストリッピング手術と比べて、術中と術後の痛みがほとんどありません。術後の内出血もほとんどありません。

血管内焼灼術では、針を使ってカテーテルを静脈内に挿入し治療を行うため、手術後の傷は針の穴だけになります。針穴は小さいので糸で縫合などは行わず、自然に縮むのを待ちます。

ボコボコと膨らんだ静脈瘤の追加切除を行った場合も針穴からstab avulsion法という、瘤を直接部分的に引き抜いてくる手技を行うのでほとんど傷跡が残りません。

手術翌日から普通に仕事ができます。自営業の方や忙しい主婦の方でも気軽に手術を受けることができます。

<血管内焼灼術のメリット>

治療後5 年で静脈閉塞率が92%という研究結果が報告されています。

  • 日帰り手術で対応が可能
  • 手術部位の傷跡がほとんど残らない。穿刺の跡のみ。
  • 出血がほとんどないので、低侵襲で負担が少ない
  • 保険適用されるため、費用が安い(3割負担で4~5万円程度)
  • 治療中も治療後も痛みが非常に少ない

グルー治療(接着剤治療)

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VenaSeal™ クロージャー システム:コヴィディエンジャパン株式会社

瞬間剤により逆流を来している病的な静脈を内腔から接着して閉鎖させる治療です。治療メカニズムは、血管内レーザー焼灼術や高周波(RF)焼灼術と同様に、カテーテルを用いてデバイスを病的血管内に挿入し血管を閉塞させて逆流を止めるという方法です。

接着剤を英語でglueと表現することから「グルー治療」と呼びます。
日本では2019年4月に薬事承認され(VenaSealクロージャ―システム 日本メドトロニック)、12月に保険収載されました。

下肢静脈瘤に対する従来の根治治療は、10年ほど前まではストリッピング手術でしたが、少しずつレーザーによる血管内焼灼術やRF(高周波)による血管内焼灼術に進化してきました。グルー治療によりさらに下肢静脈瘤の治療はさらに低侵襲化しました。

グルー治療の最大のメリットは「TLA麻酔が不要」という点です。レーザーやラジオ波による血管内焼灼術では血管内を熱により処理するため、TLA麻酔(血管の周囲にたくさん局所麻酔を注射する)が必要になります。グルー治療は接着剤による閉塞なので、熱刺激はありません。そのためTLA麻酔が不要であり疼痛が大きく緩和されます。

まだ新しい治療なので、長期成績や重症例への効果が十分蓄積されていません。海外の実績は多いのですが、まだ日本に入ってきてからそれほど経過していませんので、安全をみて比較的軽症の静脈瘤が適応となります。

またグルー治療で使う接着剤は体内に吸収されることなく、血管内に残存します。遅延性アレルギーを生じる可能性が(稀ですが)報告されています。重症化すると血管を摘出する必要がでるとも言われています。グルーにアレルギーがある方や、アレルギー体質の方は適さないと言われています。

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<グルー治療のメリット>

  • TLA麻酔が不要(痛みが少ない)
  • 治療後に圧迫ストッキングを履かなくて良い(治療当日から入浴可)
  • 治療後の出血、神経障害のリスクが少ない

<グルー治療のデメリット>

  • 中等症以上、複雑なタイプの下肢静脈瘤治療には向かない
  • 長期治療成績の報告が乏しい
  • 遅延型アレルギーを発生するリスクがある

ストリッピング術

弁不全を起こして逆流している静脈を抜去する方法です。

鼡径部と下腿部の2ヶ所を切開し、弁の壊れた大伏在静脈内にワイヤーを通して、ワイヤーごと血管を引き抜きます。また、必要に応じて静脈瘤の切除も行います。

以前はこの手術が治療の主流だったのですが、現在は血管内焼灼術で治せるようになり保険適応もあるので、ストリッピング術は、血管内焼灼術が適応外の患者さんの選択肢になります。

瘤の血管径があまりに大きい場合など内腔からの焼灼では治療が難しいと判断した場合にこの治療を選択します。

硬化療法

蜘蛛の巣状静脈瘤の治療は、拡張した血管に直接硬化剤を注入して、癒着させ招待させる「硬化療法」の適応になります。

「ポリドカスクレロール」という薬剤を注入して圧迫します。かなり細い血管であれば直接注射を、少し太めの瘤であればフォーム状にして血管内に注入します。

単に注射して圧迫するだけなので、それほど苦痛を伴う治療ではありません。日帰りで十分対応可能です。

弾性ストッキングによる圧迫療法

上記治療後は基本的には1ヶ月間ほど、弾性ストッキングの着用をお願いしています。圧迫を怠ると、残った残存瘤のなかに血栓が生じ、血栓性静脈炎を生じる場合があります。1度生じると、改善するのにかなり時間が必要になります。

1ヶ月弾性ストッキングを着用した後も、長距離移動を伴うお出かけの際はなるべく弾性ストッキングを着用するように指導しています。

実際自分も(静脈瘤ではありませんが)、長時間手術がある日などは弾性ストッキングを履いています。健常人でも立ち仕事が長くなると下腿の血液の淀みが筋層に影響し、夜間にこむら返りを起こすことがあります。静脈瘤がない方にも弾性ストッキングはおすすめです。

先日弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターの認定を取りました。慢性静脈不全症を伴う静脈潰瘍の患者さんに対しては保険適応で弾性ストッキングを処方することが可能になりました。現状の制度では静脈瘤の手術後の患者さんには、まだ適応にならないので、更に適応拡大を期待しています。

漢方治療(芍薬甘草湯、桂枝茯苓丸)

こむら返りがひどくて悩んでいる患者さんには芍薬甘草湯が「意外に」効きます。血栓既往があったりすると手術したくても適応外になってしまうので打つ手がなくなります。そういった方には芍薬甘草湯と弾性ストッキングを処方して外来通院で経過観察を行います。

下肢浮腫の改善を目的に桂枝茯苓丸を使うこともあります。下肢静脈瘤の治療を担当していると、静脈逆流はないが下肢浮腫のみある患者さんもよく来院されるようになります。リンパ浮腫であったり、心不全や腎不全で内科治療になることもありますが、そのあたりも特に問題ないような原因不明の下肢浮腫は存在します。漢方と弾性ストッキングによる保存的治療も上手く取り入れて対応しています。

Photo by Imani Bahati on Unsplash