オンライン診療を形成外科でどう活用するか

新型コロナウイルス(COVID-19)による医療経営的な影響は甚大です。まだ関西でも影響が少なかった奈良においても、コロナの影響で患者さんは病院に近寄り難くなり、外来受診者数は激減しました。6月になりようやくコロナ禍以前の状況に近づきつつありますが、やはり1−2割減といったところに落ち着いています。

コロナ自粛で幸か不幸か時間の余裕が生まれ、なにか今のうちに出来ることをしようと、「オンライン診療」の導入を決めました。実際、総合病院の形成外科で導入・運用してみて分かったことを解説します。

オンライン診療の導入

実際動いたのは4月下旬ごろ、学会から待機できる手術について自粛するよう呼びかけがあったころから、システムの選定、関係各所への協力の呼びかけ、マニュアルづくり、病院上層部への立案を行いました。総務課の協力者の方が迅速に動いていただけたおかげで、まずは自費診療(美容化粧品)のオンライン診療についてのみ限局して5月の連休明け(5/7)より開始可能となりました。

オンライン診療は患者さん側は「スマホ」を使用することを基本として構築されています。システムは「アプリの導入」、病院側ではネットに繋がっているパソコンでの簡単な設定を行うだけで、準備が完了します。

うちでは大手3社で比較検討しました。結局最終的には医療法人本部からの指定で「ポケットドクター(MRT社)」を使うことになりました。

大変なのは病院内での「オンライン診療の受診から会計までの流れ」を関わる各部門に周知して、具体的な形に仕上げるところです。

当院ではアプリ上の会計が法人本部より禁止されたため、振込による支払い対応の流れ、もしくは診療後3日以内に病院窓口に来院していただいて支払いを行う2択にすることとなりました。

「結局、病院に支払いに来るならオンラインの意味が無い」そう思っていましたが、実際運用してみると、ほぼ全例病院窓口での支払いを選ばれています。これは少し意外でした。

オンライン診療のメリット・デメリット

まずオンライン診療のメリットは、「コロナ禍の今、有熱患者が集まる病院にはなるべく行きたく無い」という方にオンラインで簡単な診察と相談ができることでしょう。

形成外科は「皮膚・皮下腫瘍」「眼瞼下垂症」「下肢静脈瘤」「あざの治療」「美容治療」など、いわゆる「緊急性に乏しい良性疾患」が診療内容の大半を占めます。本来空いている時間で気軽に受診され、そこから治療に発展していた患者さんたちが、コロナ禍で来院されなくなりました。オンライン診療は直接触診や画像検査などができませんが、訴えを聞いて治療の流れを説明し、安心して受診できる時間帯に患者さんを誘導することができます。これは予測できたメリットです。

予想していなかったメリットは、「普段仕事で受診しづらい時間帯に気軽に医療相談が受けられる」という点でした。うちではオンライン診療の対応時間を外来診療の最後に設けたため、「11:00~12:30」というお昼の時間帯に、仕事の休憩時間を利用して職場から少し相談するようなケースが見られました。初診ではなく「美容診療」のホームケア製品の追加購入だけだったので、診療はあっさり終了し、必要な製品の発注を受けて、こちらはすぐに会計と製品の準備を行い待機、患者さんは仕事帰りに病院に立ち寄り会計を済ませるという流れでした。

特に美容診療のホームケア製品(ゼオスキン ・セルニュー)の追加購入にはメリットがあると感じました。

デメリットは言うまでも無く「実際に見て触診できないこと」「検査がその場でできないこと」です。オンライン診療のビデオ通話は非常に安定しており、通信関連での不具合はほとんどありませんでした。テレビ番組でもゲストのオンライン出演などが普通になり、その辺りの通信技術はさらに進歩するものと思われます。

コロナ禍をきっかけに世の中が変わる

一般の方々がZOOM会議やオンライン飲み会、オンライン診療といった手段に「強制的に慣れさせられた」ことで、世の中のシステムが変わってきています。

子供は学校や塾がオンライン授業が当たり前になりました。3ヶ月前には考えられなかったことです。テレビ番組はオンライン出演で出演者が「平面」になっても、結局各家庭のテレビに配信されるときは「平面」配信であり、画質も中継精度もよくなっているので、うまく構成すれば全く違和感がないということに気がつかされました。

先日テレビ番組の3人司会者がそれぞれ別の場所からオンラインパネル出演で、背景がうまくつながるように配慮されて1画面に構成されているのを見ました。「結局これでいいのか・・」と思いつつ「なんと無く虚しさを感じる」と感じたのが本音です。

ここからは個人的な意見ですが、おそらく世の中はどんどんオンライン化が進み、医療も社会もオンラインが必須・当たり前になると思います。コロナ第二波が来ようものなら、さらに急速に進むでしょう。その反面で、直接診療の必要性や大切さ、コミュニケーションの重要性が増してくるはずです。

形成外科の診療の今後は、オンライン診療を「病院受診・相談の敷居を下げるツール」として活用し、「直接受診、診察」の必要性がある方を選別、外来予約につなげていく、こういう流れが予想されます。それに対応した「専門病院」が出てくると、ゆっくり自粛しているだけの病院は一気に患者さんを奪われてしまうでしょう。

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