フットケア・リハビリテーションの実際
<2020年6月25日 初回投稿、2020年10月7日 リライト>
爪のトラブル(陥入爪、爪水虫)や足裏のタコ・ウオノメのトラブル・外反母趾による疼痛などは、生駒市立病院では形成外科のフットケアで対応します。爪の場合は削って薄く整え、水虫の治療を。巻いて陥入がひどい場合は手術も考慮します。足裏のタコ・ウオノメは医学的には胼胝(べんち)、鶏眼(けいがん)といい、削って薄くしたり軟膏で柔らかくしたりします。いずれも「フットケア」という足周囲に関する集中的治療を行います。
フットケアの対象となる患者さんたちは、足の骨格の歪みが原因になっている方も多く「インソール」作成による装具治療を並行して行う場合があります。
たとえば巻き爪・陥入爪であれば、扁平足・開張足による足底の縦アーチ、横アーチの破綻が原因で母趾の浮き指を生じているため、足底からの突き上げ荷重が減り、爪が巻きやすくなることがあります。
タコ・ウオノメは扁平足・開張足によるアーチ構造の破綻が原因となり、局所への過剰な重心負荷が原因になっている場合がほとんどです。
フットケア治療にインソール療法は不可欠であり、インソールを入れる靴のセレクトも非常に大切な治療と考えています。さらにインソール療法と切っても切れない関係にあるのが「リハビリテーション」です。
フットケアにリハビリは必要
フットケア関連の疾患でインソールを作成した患者さんたちは、さっそく普段履きの靴にインソールをセットして履いてくれます。足型から作成して、自分にぴったりあわせた世界に1枚しかない完全オーダーメイドのインソールです。「どれだけ足が楽になるだろう」と患者さんは期待膨らみます。
しかしインソールはあくまで「装具による足底の歪みの矯正・補正」の治療です。慣れてくれば当然楽になるのですが、履き始めの1ヶ月程度は変形した足底アーチ構造を矯正していくものなので、普段体重がかからない「土踏まず」に荷重が掛かり、伸びてしまったアーチを下から押し上げる状態になります。
患者さんによっては、履き始めて2−3回くらいで「足の裏の痛み」を自覚されます。この経過をしっかり説明してお渡しするのですが、患者さんの中には「インソールを入れたらすぐに足が楽になる」と思っている方もいるので、履いて痛みが生じたことに対して「インソールが合わない」という認識が生まれてしまいます。
実際はインソールは悪くなく、筋肉や骨格・関節が矯正についてこれていない状態です。この「認識の修正」と「インソールに足をなじませていく」ためにフットケア・リハビリテーションは必要になります。
フットケア・リハビリの流れ
インソールを作成した患者さんには必ずフットケア・リハビリテーションの治療について説明します。患者さんはリハビリと聞くと「病院に頻繁に行く」「終わりがない」「高齢者がするもの」というイメージを抱かれるので、その点を修正します。
当院でのフットケア・リハビリは以下のような方針で行っています。
①週1回、月曜から土曜日の9時から17時までいつでも対応可能。
②4週間(5回来院)で終了できる。初回と最終日に足機能の改善について評価してもらえる。
③リハビリがない日に自宅で行う「リハビリ宿題」が出され、翌週にチェックが入る。4週間のプログラムで自宅でのリハビリ習慣が身につくため、それ以降は自主トレーニングで対応できる。
「週1回、1ヶ月で終わるんだったら、少し頑張ってみようかな」と言われる患者さんが多く、インソール作成後のリハビリ実施率は8割を超えています。年齢に関係なく実施しており、若い方は小学生くらいの巻き爪・扁平足の対応から、高齢者は90歳代まで対応します。
実際の流れですが、まずリハビリに来院されたら初回は各種計測を行います。バランス能力や姿勢のチェック、関節の可動域や筋力チェック、複数の項目について初回のデータをチェックします。その後、足関節や足根骨の関節をほぐす足部マッサージ、足趾の指の運動、下腿の筋力向上の運動などを行います。自宅でも行えるようなリハビリメニューを理学療法士と一緒に行います。それぞれのリハビリメニューは持ち帰り用のパンフレットがあるため、自宅でもそれを見ながら実施することができます。
1回の実施時間は大体40分〜60分程度になります。終了したら次回予約を決めて、それまで自宅で行うリハビリ宿題について確認します。足部のリハビリを毎日の習慣にしてもらい、1週間後に再度リハビリに来院されたときに、実施状況をチェックします。
参加者は足のトラブルに悩まされていた方ばかりで、なんとか足を良くしたいという思いがありますので、皆さん非常に実施率が高く、5回目の最終評価ではデータの改善が得られていることがほとんどです。
患者さんの満足度
フットケア・リハビリテーションを実施し始めてから1年以上経過します。終了した患者さんにお話を聞くと、ほとんどの患者さんがフットケア・リハビリテーションに満足されています。年齢や体力に合わせてリハビリの強度は調整しているので、若い方も高齢者にもうまく合っており、年齢に関わらず満足度が高い印象です。
満足度が高い理由の一つには、「リハビリスタッフの努力」も影響していると思いますので、大変感謝しています。各種リハビリメニューの配布物や、接遇の向上、評価の伝え方の工夫など、リハビリスタッフの皆さんが色々工夫してくれています。
患者さんの満足度が、足の状態の改善を反映していますので、インソール・フットケアリハビリの流れで、長年悩みだった足の問題が解決した方は非常に増えてきています。