タコ・ウオノメと思っていたら違った

足の裏にいつのまにか出来たシコリ。タコやウオノメと思って放置しているとどんどん大きくなって痛みが出始めた、そんな経験ありませんか?

タコやウオノメは足の裏の皮膚に繰り返し刺激がかかることにより、角質が反応性に肥厚した状態です。外反母趾や扁平足・開張足など、足の骨格が変形して、体重のかかるバランスが偏り、一点に集中した場合に発生しやすくなります。靴があっていなくて、足先が当たっていたりする場合にも生じます。タコやウオノメはインソールによるバランス修正や、自分の足に合った靴の選定を行うことで改善します。削っただけでは再発しやすいので、必ず原因を探り、改善することで、削った後に再発しにくくなります。

タコ・ウオノメはそれほど慌てることはありませんが、中には「タコ・ウオノメ」と思いこんでいて、実際は別の病気だったケースがあります。いくつか紹介します。

尋常性疣贅(ウイルス性のイボ):良性

子供の足の裏などに小さい点のような硬いデキモノがプツプツと存在している場合、ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)の可能性があります。子供はあまりタコはできないので、気がつきやすいのですが、中高齢になると「イボ」よりも「タコ・ウオノメ」のほうが身近になり、それほど気にせず放置されていることがあります。特徴は表面がイガイガした凹凸ができており、赤い点々(血管)が透けて見えているなど、いくつかあるのですが、一般の方には普通のタコ・ウオノメとウイルス性イボは見分けがつきにくいかもしれません。

ウイルス性イボは液体窒素で焼灼する治療が一般的です。ドライアイスで凍らせて、ウイルスを皮膚の細胞ごと死滅させてカサブタにしてしまう治療です。外来で5分もあればできる治療で、そのまま歩行して帰宅することができます。2週間後くらいに再診し、角質を除去して残存を確認します。まだ基部にウイルス性イボが残存していれば、再び液体窒素の治療を行います。うまく反応すれば2−3回の治療でほぼ完治に至ります。

小さい病変ほど治療しやすいので早めに受診しましょう。ウイルス性イボも大きくなってしまうと治療が効きにくくなり、難治化します。足の指の間や足裏に発生してしまうと痛みの原因にもなりますので、気になったら早期受診をお勧めします。

表皮嚢腫(粉瘤):良性

足底の表皮嚢腫(粉瘤)は表面から見た場合はほとんどタコ(胼胝)と変わりありません。それもそのはず、実際は表皮嚢腫が足底にできると、その異物としての硬さにより足底表面にタコ(胼胝)を伴うので、実際にはタコ+表皮嚢腫という状況になっています。

通常のタコ(胼胝)の治療を行ってもなかなか改善しない場合や、触った感じがかなり皮膚の深くにまでシコリができているような状態のときに疑います。エコーやCT・MRIといった画像検査を行うと皮下に嚢腫が存在しているのが明確になります。

これも放っておくと徐々に大きくなるため治療した方がいいのですが、ウイルス性イボのように簡単にはいきません。

表皮嚢腫は皮膚がまくれ込んだ袋のようなものであり、袋を取り残すと再発するので、一塊で摘出する必要があります。局所麻酔の手術などで、皮膚の一部と深部の袋状の組織を摘出し、創部を縫合閉鎖します。

手や体の表皮嚢腫(粉瘤)であれば、局所麻酔で日帰り手術にて簡単に治療が可能なのですが、足底の表皮嚢腫の場合は加重がかかる場所の手術になるので、色々と気を配らなくては最悪の場合、縫合した創部が離開してしまいます。

術後2週間で抜糸になりますが、1週間はなるべく浮かせるように松葉杖を使ったり、高齢者の場合なら松葉杖を使うほうが危険なので入院・車椅子移動での安静などを試みたりします。

抜糸後も足の裏の傷は踏みしめるたびに痛みが出たり、同部位が硬く瘢痕・胼胝になってしまったりすることもあるので、術後に体重分散も考慮してインソール治療や靴の調整などを行います。

単純な「できもの(皮下腫瘍)」なのですが、場所が悪いと治療も手間がかかります。

きちんと管理して対応すれば、トラブルも無く治っていきます。

有棘細胞癌:悪性

「足の裏のタコから血が混じった汁が出る」という訴えで患者さんが来院された場合、形成外科医としてはかなり慎重に対応します。皮膚癌の可能性があるからです。中には靴擦れなどのこともありますので、まずは状態を観察して経過を聞きます。数ヶ月治っていない、中央が崩れるような潰瘍になっている、悪臭を伴うなどの場合は、悪性を疑いデキモノの辺縁から一部皮膚を切除して顕微鏡の検査に提出します。(病理組織検査)

この検査は局所麻酔をわずかに注射して2−3mm程度の皮膚を切り取り、1−2針縫合するだけの検査なので外来で5分ほどで終わります。

検査結果には1週間必要です。翌週まで絆創膏の処置を行い、結果をみて対応します。ただのタコ(胼胝)の靴擦れの場合もありますが、万が一悪性のもので合った場合には、ガイドラインに従って腫瘍の境界からある程度マージンをとって完全切除しなくてはいけません。転移の精査も必要になります。

皮膚癌は悪性であっても、手順を間違えず正しく対応していけば完全治癒を目指せます。放置していると、どんどん大きくなったり、全身に広がったりしますので、気になる方は形成外科に受診しましょう。