わきが(腋臭症)の保険治療

わきが(腋臭症)の保険治療

わき(脇)の体臭が強くてお悩みの方も形成外科で保険治療ができます。「わきが(腋臭症)」と言います。

腋臭症は汗を出す腺に細菌が付着することが原因です。汗を出す腺には2種類あり、「エクリン腺」と「アポクリン腺」と呼ばれます。アポクリン腺が臭いを出す原因と言われており、脇に限らず陰部や耳の穴などにも存在します。思春期にアポクリン腺が発達するので臭いの問題も思春期ごろにピークになります。

保険での治療が可能なのですが、病院によっては自費治療でも治療をしています。大きな違いは手術による「創の大きさ」です。自費では特殊な器具を使い小さな穴から手術を行い、アポクリン腺だけを除去する方法がとられています。ミラドライという電磁波を利用した「切らない腋臭症治療」も自費治療になります。

皮弁剪除法

保険治療では皮弁剪除法が一般的です。麻酔は局所麻酔を使用して行います。脇全体に局所麻酔を注射して感覚を無くします。

脇の中央に3cm程度切開を加え、そこから脇の「毛が生える部分」+1cm程度外側までを皮下剥離し、皮膚を反転させて毛根近くに存在するアポクリン腺を除去します。

手作業で皮膚表面に傷をつけないように、皮膚の血流を保ちながら丁寧に除去していきます。切開した部位から遠い部分についてはシェーバーを用いて除去します。一通りアポクリン腺の除去が完了したら、皮膚を縫合し、剥離した下床から皮膚が浮き上がらないように糸で牽引固定を数カ所行います。ガーゼとテープで圧迫して、包帯でさらに上から固定したら手術終了となります。

局所麻酔で日帰りも可能ですが、当院のような総合病院では全身麻酔・入院での対応も行っています。思春期の子供さんが受けることも多く、局所麻酔を複数回注射するのは痛いもので、手術が怖いという訴えもよく聞かれます。軽く寝てもらうだけの全身麻酔で、術後1泊だけして退院するというのが、最も多い印象です。

保険適応の基準

保険治療の適応基準は、腋臭症の場合明確な数値の出るような検査や画像診断がありません。主に問診や客観的な臭いの診察にて決まります。

「家族や他人(第三者)から脇の臭いについて指摘されたことがあるかどうか」

「白いシャツや下着が黄色くなったり、臭くなったりするか」

「家族内で同じような腋臭症の症状を有する人はいるか」

問診では上記のような質問をします。

次にガーゼを脇に挟み10分程度挟んでもらい、実際に臭いをチェックして「臭いが強いかどうか」の判断をします。大変原始的な方法です。もう少し数値化できたりしないか「腋臭症チェッカー」のような器具が販売されればよいのですが、そんなものはありませんのでガーゼチェックがいまでも主流です。

遠目からでもかなり臭う人は「問診するまでもなく手術適応」

鼻を近づけると臭う程度の人は「問診の状況も判断して手術適応を決める」

しっかり嗅いでも臭いがわからない人は「問診や悩みの程度をよく考慮して本人・家族と要相談」です。

手術で臭いが完全になくなるわけではありません。アポクリン腺は先述したとおり脇だけに存在するわけではなく、前胸部や背中からも臭いは生じます。脇のアポクリン腺も手術で完全にゼロになるわけでもありません。もともとの臭いに比べて「臭いが減る」治療だと思って治療を受けてもらっています。

臭いの治療は強い「コンプレックス」を伴うことが多く、患者さんはいろいろと辛い思いをして、一大決心して来院されている方もいらっしゃいます。対応するときは、そのあたりも考慮しています。

費用について

K008 腋臭症手術 皮弁法 6,870点 が手術の点数(費用)になります。片方の手術料金だけでは68700円ということです。片方だけ手術するという方は少ないため、両方で137400円、3割負担の方なら41220円ということになります。

日帰りの方なら、これに術中の薬剤の費用や処方の費用がプラスされます。

入院全身麻酔の方はそれらの費用もプラスされます。

わきがの治療は汗が気になる季節に増えてきます。気になる方は形成外科に受診しましょう。