医局を離れた形成外科医が働く場所を見つける方法。

医局を離れた形成外科医が働く場所を見つける方法。

単刀直入に言います。医局を出て無所属形成外科医になっても、いくらでも働く道はあります。

開業やクリニック勤務、美容勤務という道に入るのは、或る程度道筋があるためスムーズです。そもそも医局から離れている道なので。

総合病院で手術や入院患者の診療を行う「いわゆる保険形成外科医」で続けていくには、少し「道が狭く」なってしまいます。多くの総合病院の形成外科部門は、たいていが「医局からの派遣」で成り立っており、医局に入局が絡んでくるからです。

ただ、どこの医局も部長もたいていはウェルカムであり、病院と診療部長とさえ話がつけば無所属形成外科医で働けるところはあるとおもいます。

もう一つは「形成外科」の診療科がまだ無い「総合病院」に形成外科を立ち上げる方法です。大変ですが、うまくいけば自分の思った通りの勤務環境を作り上げることができます。当然、いきなり診療責任者からスタートで、軌道にのるまではやること、決めることなどたくさんありますが、クリエイティブな生き方を望む人にはいいかもしれません。ちなみに僕はこの道を選びました。

医師になったのが2004年。もう16年も経過し、医局を出てから8年以上経過し、まったくのゼロから形成外科を作り上げていくことを経験した今、同じような道を考えている人に参考になればと思い、このブログ記事を書いてみました。

形成外科医になってから医局を出るまで

形成外科医師の多くは「大学」を中心とした医局に属して、その関連施設(大学病院や関連の総合病院)で勤務していると思います。もしくは「開業」されクリニックなどで勤務されている方もいることでしょう。中には美容医療機関に所属し勤務しているタイプの働き方もあると思います。

それぞれ仕事の内容は大きく違います。

大学・総合病院:一般形成外科を中心に手術・入院患者の対応・外来診療など「the 形成外科」という働き方。病院によっては美容も対応。

開業・クリニック(個人):外来診療・日帰り手術を中心とした外科対応。美容診療の展開も。

美容医療機関所属:勤務医だが入院や褥瘡・潰瘍といった仕事はなく、美容に関する外科的・皮膚科的診療を行う。

どんな仕事も、どんな道にも面白さはあり、有意義に働けるかどうかは自分自身にかかっていると思います。個人的には「the 形成外科」に魅かれ、形成外科の道に進んだので、初期研修後は迷わず「総合病院勤務」→そのまま大学医局に所属しました。3年目から3年間は滋賀と兵庫の大きな総合病院での形成外科修行、6年目から1年間は大学病院(京大病院)で、大学らしい疾患を勉強させていただきました。そして7年目には再び総合病院へ(浜松)。その年に専門医試験を受け、無事専門医を取得。8年目は自分が形成外科部門の責任者となりました。

8年目に思ったこと、「経験が無さすぎてつらい・・・」

一人で色々責任持ってやっていくには、経験と知識、度胸が必要です。

その後、いろいろな諸事情が重なり医局を出ました。意味深ですが、一言でいうと「専門医をとったら初期研修を受けた病院に戻り形成外科の診療を行う」と3年目になった時から決めていました。そのためには医局を出る必要性があったため、教授に相談の上、同門会には所属した上で医局員から外れ(医局を出て)、そこから無所属形成外科医がスタートしました。

実際に自分がやってきたこと

ゼロからの形成外科立ち上げでまず最初にやること、それは診療体制の確立と、患者集患です。総合病院では電子カルテなどで診療システムがすでにできているはずですので、それを利用し、外来・入院の基本的手順は病院の流れに乗っかります。

形成外科独自に必要なことは大きく分けると以下の3つ

①外来診療に必要なもの 診察室、処置の物品機材、外来看護師との連携

②入院診療に必要なもの 処置の機材、物品、病棟看護師との連携

③手術に必要なもの 手術の鋼製機器、手術室看護師との連携

こまかい機械や物品については「なんとなく」ではダメです。型番や大きさ、糸の太さや針の長さ、彎曲まですべて指定しないといけません。だれもやってくれないのですべて自分でする必要があります。

最初は大変でしたが、一度経験すると大体ノウハウが身につきますので、2つ目、3つ目の新規開設は楽になります。

診療体制が出来上がったら、今度は「集患」が必要になります。正直こちらのほうが大変です。機材などは指定してリストを作り、購入すればいいだけですが、患者さんはそう簡単にはやってきません。

まずは近隣医療機関(皮膚科や内科、紹介をくれそうな近隣の施設・病院の院長・理事長)に直接足を運び、挨拶に回る必要があります。回りきれない診療所には挨拶文面を作り、郵送でお手紙を送ります。認知され始めると、少しずつ紹介患者さんが増えていきます。

そして市民公開講座や院内勉強会などで、診療科を職員や地域の皆さんに知ってもらうような活動を継続的に行います。ホームページの充実も、だれもやってくれませんので自分で内容を作って、事務側に掲載を依頼します。

地道な活動は書き上げるとキリがありません。少しずつ来院される患者さんが増え、丁寧な診察と対応を繰り返していると、少しずつ手術も増え、診療科としての収益も増加してきます。

何でも対応できる形成外科医を目指して

総合病院の形成外科は「なんでも屋」であるべきだと思っています。地域の総合病院における形成外科の役割は、地域の人たちの様々なニーズに応えることです。

開業医や美容クリニックでは特定の「得意な領域」を伸ばして、患者さんに選ばれる病院を目指します。

総合病院は「とにかくあそこの病院にいけばなんとかなる」という位置付けにあるべきです。うちの形成外科ではそのなかで、「外傷」や「高齢者の治りにくい傷」のニーズを埋めながら、形成特有の特殊領域をいかに広くカバーできるかということを心がけて、診療領域を広げてきました。

「なんでも対応できる」ということは責任が重いことです。技術の深さ、決断できる度胸など、いろんな感性を磨いていくことが要求されます。開設から5年が経過し、入院も外来も手術もかなり増えました。形成外科として勉強にきてくれる先生も現れはじめました。大学に所属し、研究や派遣先で活躍するのもよいですが、無所属でもこうやって満足できる診療体制は作り上げることが可能です。

いつか開業するときにもこういったノウハウや技術は生かせます。医局を出て、自分の気に入った土地に自分の形成外科としての居場所を作りたいと思っている方がおられたら、ぜひ相談してください。必要な機材や形成外科立ち上げのための宣伝ノウハウ、地域のプライマリ形成外科として必要な技術のイロハを教えることが可能です。ここでは書きませんが、経済的にも医局所属で勤務するより上は実現できると思います。